労働党、EU離脱方針の先延ばしで辛うじて結束
(英国、EU)
ロンドン発
2019年09月24日
9月21日から25日までの5日間、英国南部ブライトンで開催されている最大野党・労働党の党大会は23日夕、最大の焦点となる英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる同党の方針について採決した。その結果、ジェレミー・コービン党首らが推す「離脱と残留のどちらを支持するかは総選挙後に決める」とする案が可決され、EU残留支持を党方針とする対案を僅差で退けた。
採択された方針は、労働党の政策の大枠などを決める党全国執行委員会(NEC)が9月22日までにまとめた。政権獲得後、速やかにEUと交渉をまとめ、6カ月以内に同党がまとめた合意案かEU残留かを選択肢とする2度目の国民投票を行うというもの。党として合意に基づく離脱と残留のどちらを支持するかは総選挙後に決定するとして、先延ばしする案になった(表参照)。
これに対し、EU残留を望む党員や支持母体の労組の一部が反発。NECの方針のほか、EU残留を党の方針とする動議も採決にかけられ、さらにコービン党首ら執行部を支持するかどうかの別の動議も提出されていた。採決は接戦が予想され、3つのうち複数の動議が可決されて混迷が深まる可能性も指摘されていたが、NECの方針と執行部支持の動議が可決され、EU残留を明示する案は僅差で否決。辛うじてコービン党首支持でまとまった格好だが、挙手による採決で否決されたことを不服とする残留支持派の党員多数が記名投票を求めて抗議するなど、党大会の会場は一時混乱し、ブレグジットをめぐる党内の根深い分断が浮き彫りになった。
労働党の混乱の背景には、多くの党員がEU残留を支持する一方で、離脱を支持する同党支持者が多い地盤を無視できない事情がある。6月には離脱支持が多数を占める選挙区から選出された同党議員ら30人近くが、2度目の国民投票を回避するようコービン党首に要請していた。同党首は9月23日夜、党大会に参加した企業関係者らを前に「多くの党員がEU残留を支持していることは理解しているが、(それ以上に)団結が求められている」とコメント。苦しい心境をにじませた。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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