米GMストライキ、なぜ暫定合意後も継続されたのか

(米国)

シカゴ発

2019年10月23日

全米自動車労働組合(UAW)とゼネラルモーターズ(GM)の間で今後4年間にわたる労働協約の暫定合意が結ばれたが、ストライキは少なくとも10月25日まで継続されることが決まった(2019年10月21日記事参照)。UAWはストライキの長期化を受けて、賃金補償手当を週250ドルから275ドルに増額した。暫定合意によって受け取りが見込まれる1万1,000ドルのボーナスがこれを補うかたちとなるが、ストライキが長期化すれば、相対的な受取額は減少する。それにもかかわらずUAW指導部がストライキ継続を決定したのは、暫定合意が一般組合員の投票で承認される保証がないためだという。

暫定合意の拒否は過去にも実際にある。2015年にネバダ州でフィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)のUAW一般会員が最初の暫定合意を拒否し、UAW指導部はFCAとの再交渉を強いられた。この時は合意の拒否から新しい労働協約の承認まで約3週間かかっている。今回の暫定合意では、UAW指導部は主要争点の1つの雇用保障に関して、協議対象となっていた閉鎖予定の4工場のうち1工場しか生産維持を確保できなかった。組合員の中には反対票を投じると主張している者もおり、先行きが見通せない状況だ。

カリフォルニア大学バークレー校のハーリー・シェイケン教授と、元GM役員で20年以上UAWとの交渉を担当してきたアーサー・シュワルツ氏は、デトロイト・ニュースの取材に対して「(ストライキを続けるのは)UAW指導部は暫定合意が認められるか確信を持てず、GMに対してまだ交渉力を持ち続けたいという姿勢の表れだ」と指摘している。

(河内章)

(米国)

ビジネス短信 d48a65587bc8ae51