米USTR、通商法301条に基づく対EU制裁関税を10月18日に発動へ
(米国、EU)
ニューヨーク発
2019年10月03日
米国通商代表部(USTR)は10月2日、EUによる欧州大手航空会社エアバスへの補助金拠出に関する紛争に関して、WTOの仲裁結果を受けて、1974年通商法301条(注)に基づき、年間約75億ドル相当のEU原産品の輸入に対して、10月18日から制裁関税を発動すると発表した。WTOは同2日、EUによるエアバスへの不当な補助金に対して、米国が取り得る報復措置の範囲を年間74億9,662万ドルと結論付ける報告書を発表していた。
大型民間航空機に10%、それ以外の品目に25%の追加関税を発動
USTRのロバート・ライトハイザー代表はプレスリリースで、「15年に及ぶ係争の末に、ついにWTOは米国がEUによる違法な補助金への対抗措置を取ることを認めた」とし、10月18日にEU原産品の輸入に対して、追加関税を発動すると発表した。同時に、「EUとの間で、米国の労働者に利益をもたらす方法で、この問題を解決するための交渉を開始することを期待している」とした。
USTRは4月と7月に、EUからの輸入額が計250億ドル相当の輸入品を、制裁関税の対象候補として発表していたが(関連ブラック ジャック アプリ)、WTOの仲裁結果を受けて、その範囲を絞り込んだ。今回発表された制裁関税の対象品目のうち、大型の民間航空機には10%、農林水産品およびその他の品目には25%の追加関税が課される。USTRは、追加関税率を100%まで引き上げる権限を有していることに言及しつつ、「これら関税率はEUとの協議を基に、継続的に審査していく」としている。
制裁関税の対象となる品目は、HTSコード8桁の分類で合計160品目となるが、英国産のスコッチ・ウイスキーやドイツ産のコーヒーなど、品目ごとに原産国が指定されている。
EUのセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は10月2日、WTOの仲裁結果が発表された段階で、米国による米航空機大手ボーイングへの補助金も、WTO協定違反との裁定結果が既に出ており、いずれEUも対抗措置を取る権利をWTOに与えられることに言及した上で、「米国がWTO紛争解決機関から権限を認められたとしても、対抗措置の執行を選択することは近視眼的で望む結果をもたらさない」との声明を発表している。
(注)通商法301条は、貿易協定違反や米国政府が不公正と判断した他国の措置について、貿易協定上の特恵措置の停止や輸入制限措置などの貿易制裁を行う権限を、USTRに与えている。
(磯部真一)
(米国、EU)
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