米USTR、301条に基づく対EU追加関税対象の候補品目を追加

(米国、EU)

ニューヨーク発

2019年07月02日

米国通商代表部(USTR)は7月1日、EUが欧州大手航空会社エアバスに不当な補助金を拠出していることへの対抗措置として、1974年通商法301条(注1)に基づき、追加関税の対象として既に4月12日に公表しているEUからの210億ドル分の輸入品目(関連ブラック ジャック ルール)に加えて、新たに対EU輸入額40億ドル相当の89品目を追加すると発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。今後、パブリックコメントを求めた上で公聴会を開催し、最終的な措置を決定する。

USTRは、今回発表した89品目は4月に発表したリストに関する公聴会の結果および、その後の追加のパブリックコメントを踏まえた上での補完的なリスト(supplemental list)だとしている。農水産・加工食品が多く、一部の金属製品や鉄鋼製品なども含まれている。パブリックコメントの期間と公聴会の日時は次のとおり(注2)。

  • 7月24日 公聴会での証言申し込みと証言の要約提出期限
  • 8月5日 パブリックコメントの提出期限
  • 8月5日 USTRの301条委員会による公聴会開催(場所:ワシントン)
  • 8月12日 証言に対する反証を含む、書面でのパブリックコメントの提出期限

WTOは2018年5月28日、EUによるエアバスへの補助金はWTO協定違反だとする米国の訴えを認める判断を示し、米国に認める対抗措置の範囲について現在、検討を進めているところだ(注3)。USTRは、最終的な追加関税の対象額・品目および追加関税の税率は、4月のリスト発表時と同様に、近く発表が見込まれるWTOの裁定に従い、決定するとしている(税率の上限は製品価格の100%としている)。なお、WTOによる裁定結果が今回の公聴会のプロセスが完了する前に発表された場合、「直ちに4月発表のリストに基づき対象品目に追加関税を課し得る。かつ、補完的リストの品目に関してさらなる措置をとる可能性がある」としている。追加関税の発動時期については、WTOによる裁定を注視する必要がある。

(注1)通商法301条は、貿易協定違反や米国政府が不公正と判断した他国の措置について、貿易協定上の特恵措置の停止や輸入制限措置などの貿易制裁を行う権限をUSTRに与えている。

(注2)パブリックコメントおよび公聴会での証言申し込みと証言の要約は、www.regulations.govのドケット番号USTR-2019-0003外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから提出できる。

(注3)WTOの補助金および相殺措置に関する協定(SCM協定)への違反が認められ、当該国が十分な是正措置を行わなかった場合、原告は当該国に対し対抗措置を講じることが認められている。なお、WTOは2019年3月28日に、米国ボーイングへの補助金はWTO協定違反だとするEUの訴えを認める判断も下している。

(磯部真一)

(米国、EU)

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