天然ガス・パイプライン輸送契約をめぐり、電力庁と民間企業が和解

(メキシコ)

メキシコ発

2019年08月28日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は8月27日の記者会見で、電力庁(CFE)と民間企業4社との間で紛争となっていた天然ガス・パイプライン建設運営契約の見直し()をめぐり、3社との契約については和解に至ったと発表した。残る1社も近日中に和解するという。これにより、国際仲裁判断に至る前に民間企業との紛争は解決に向かうもようだ。合意に達したのは、CFEが民間企業と締結した7本の契約のうち、フェルマカと締結した2本を除く5本。

7月8日から8月26日にかけて何度も行われたCFEと民間企業との交渉では、民間部門を代表して企業家調整評議会(CCE)のカルロス・サラサール会長とメキシコ・ビジネス評議会(CMN)のアントニオ・デル・バジェ会長も常に同席した。大統領は2人の積極的な関与に感謝するとともに、企業側の合意形成に向けた前向きな姿勢、特にCFEと最初に合意したカルソ・グループのオーナーのカルロス・スリム氏の貢献に謝意を表した。

内外から評価の声

今回の契約見直しでは、CFEが民間企業に支払う対価について、民間企業の投資回収率を主眼とするものから、米国、カナダ、欧州での市場価格を参考に、天然ガスのパイプライン輸送業務への妥当な対価として再設定し、パイプライン利用者にとって他国と比べても競争力のある天然ガス輸送コストになるよう配慮している。これにより、利用者であるCFEとっては総額で45億ドルの経費削減につながるが、建設に多額を投じた民間企業に長期的に損害が出ないよう、契約期間を延長(25年から30年、あるいは35年)し、CFEが利用しない場合に第三者に利用させること(CFEも収益の一部を得る)など、民間企業の意向にも配慮した内容となっている。双方が今後いかなる訴訟も提起しないことも約束しており、契約内容の安定性も確保された。

今回の合意を受け、国内外から評価する声が上がっている。格付け会社ムーディーズは、民間投資に信頼性を付与するとして評価している(「エル・エコノミスタ」紙8月27日)。メキシコ経営者連合会(COPARMEX)のグスタボ・デ・オジョス会長も、政府に対する民間部門の信頼が醸成される道を開くものだと歓迎している。また、紛争の解決により、テキサス南部~トクスパン海底パイプラインをはじめとするパイプラインの運用が実際に開始されることは、発電燃料としての天然ガスが不足するユカタン半島を中心に、メキシコ全土の経済活動にとって重要な意味を持つと指摘する声も多い。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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