米大統領選挙の第2回民主党候補者討論会、リベラル派と穏健派の対立が鮮明に

(米国)

ニューヨーク発

2019年08月02日

2020年の米国大統領選挙に立候補している民主党候補者20人()による第2回の討論会が7月30~31日、ミシガン州のデトロイトで開催された。数ある政策論点の中でも、医療保険制度に議論の時間が多く割かれ、党内のリベラル派と穏健派との対立が鮮明になった。

候補者は1日ごとに、10人ずつに分かれて討論を展開した。初日の目玉は、党内リベラル派とされ、国民皆保険制度(メディケア・フォー・オール2019)を主要な政策に掲げて支持率でも上位のエリザベス・ウォレン上院議員(マサチューセッツ州)、バーニー・サンダース上院議員(バーモント州)と、他の穏健派候補の対立だった。ジョン・ディレイニー元下院議員(メリーランド州)、スティーブ・バロック・モンタナ州知事らは、リベラル派2人の政策は非現実的で、民間の保険会社を含めた選択肢を国民から奪う、と厳しく批判した。これに対してウォレン、サンダースの両氏は、可能な範囲のことを議論している場合ではない、暴利をむさぼってきた製薬会社が政治を支配するシステムを変えるべきだ、などと反論した。

2日目は、支持率トップを走るジョー・バイデン前副大統領と、第1回の討論会で存在感を示し、支持率上位にいるカマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州)に対して、他の候補がどう挑むかに焦点が当たった。ただし、討論会の冒頭では、医療保険制度に関してバイデン氏とハリス氏が互いの政策を批判し合う展開となった。その他の議題では、他の候補が、バイデン氏とハリス氏の過去の言動を取り上げて批判する場面が多く見られた。例えば、コーリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州)はバイデン氏に対し、バイデン氏が過去に支持した刑事司法制度改革によって黒人が多く収監されるようになった、と批判した。

開催地が自動車産業の中心地デトロイトだったため、通商政策に焦点が当たると予想されたが、両日とも時間の制約で短時間の議論になった。トランプ政権の追加関税については、おおむねどの候補も、他国からの報復関税が米国の農家や労働者を苦しめていると批判的な姿勢を取った。司会者から、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に再加盟するかと問われたバイデン氏は、労働者や環境運動家らも議論に含めたかたちで再交渉をするとして、オバマ政権時代にまとめたTPPから距離を置く発言をしている。

今回の討論会を主催したCNNは、初日の勝者はサンダース氏、バロック氏、ピート・ブッティジェッジ・インディアナ州サウスベンド市長、ディレイニー氏、ウォレン氏で、敗者はベト・オルーク前下院議員(テキサス州)、エイミー・クロブチャー上院議員(ミネソタ州)としたが、同時にウォレン氏について、リベラル派としてはサンダース氏の方が優れていたため、敗者でもあると評価した。2日目の勝者はコーリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州)、タルシ・ガバード下院議員(ハワイ州)、ジュリアン・カストロ元住宅都市開発庁長官、バイデン氏で、敗者はハリス氏、キルステン・ジリブランド上院議員(ニューヨーク州)とした。

次回の討論会は9月12~13日にテキサス州ヒューストンで開催の予定で、登壇するには民主党全国委員会(NDC)が設定する基準(注)を満たす必要がある。

(注)NDCはウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、(1)少なくとも4つの世論調査で支持率2%を超えること、(2)少なくとも20以上の州でそれぞれ400人以上の寄付者を獲得し、その合計人数が13万人を超えること、を求めている。

(磯部真一)

(米国)

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