ルールに基づく国際秩序を重視するEU

(EU、日本)

ブリュッセル発

2019年07月01日

欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は6月29日、G20大阪サミット(首脳会議)閉幕後、ツイッターで「世界の主要課題への対応に向けて団結できた」「効果的で成功した会合だった」と述べ、議長国・日本の安倍晋三首相に対する謝辞を投稿した。また、20年越しの交渉を続けてきた「EU・メルコスール自由貿易協定(FTA)」の政治合意()を発表したことについても触れ、「歴史的な日」とその意義を強調した。

自由なデータ流通に関する日本提案を支持するEU

ユンケル委員長は同サミットが開幕した6月28日にも、「世界に対するわれわれ(EU)のメッセージは明確でシンプル。EUはルールに基づく国際システムを支持、必要な場合にはシステムをアップデートすることもある。そのためなら、われわれは誰とでも協力する」と、サミットに向けた意気込みをツイッターで発信していた。

またユンケル委員長は、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長と共に6月28日、サミット開幕に先駆けて、EUとしての声明を出し、公正・公平な通商関係の重要性を強調した。その中で同委員長は、EUとして米国、日本、中国、その他の関係国と、WTO改革や対等な競争条件確立に向けて協働する姿勢を打ち出し、不公正な産業補助金や技術移転の強制などの問題解決を進めるとした。また、こうした取り組みが、現代のデジタル経済に適した国際競争のルールを構築することにつながると指摘。安倍首相が提唱する(高水準の個人データ保護レベルを持つ国・地域間のデータの越境移転を促進する)「信頼性のある自由なデータ流通PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)構想」を、EUが完全に支持するのはこのためだ、との認識を示した。

他方、欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は6月28日付の声明で、G20メンバーをはじめとして世界で貿易制限的な動きが拡大する現状について、「経済界の懸念の源泉」と指摘。今回のサミットがこうしたトレンドを食い止めることを期待しているとコメントしていた。また、同会議所は「G20は、WTOルールの抜本的改革を通じて、ルールに基づく多角的な貿易システムが機能し続ける体制を整備すべく尽力すべき」と提言。WTOの紛争解決制度が機能不全に陥ることについて、強い危機感を表明していた。

(前田篤穂)

(EU、日本)

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