EU・メルコスールFTAの政治合意、欧州産業界から支持相次ぐ
(EU、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、メルコスール)
ブリュッセル発
2019年07月01日
欧州委員会は6月28日、EU・メルコスール(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)連合協定を構成する自由貿易協定(FTA)について政治合意に達したと発表した(関連ブラック ジャック コツ)。欧州委は、特にメルコスール加盟国でEU産品に対し高い関税が課される品目として、工業品では自動車(35%)、自動車部品(14~18%)、衣料品・靴(35%)化学品(最大18%)など、農林水産品では、ワイン(27%)、スピリッツ(20~35%)、チョコレート(20%)などを挙げ、これらが撤廃されることで、EU側に年間40億ユーロ相当の関税削減効果が期待できると試算している。さらに、同協定の成果は関税面に限らず、メルコスール側での食品安全や消費者保護に関する水準向上、環境基準や労働者の権利保護などの面でも効果が期待できるとしている。また、今回の協定ではEU側のワイン、スピリッツなど飲料や食品について357もの地理的表示(GI)保護もメルスール側で認められるとしている。
日EU・EPAとCETAの合計を上回る関税削減に期待
今回の政治合意について、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は6月29日、メルコスールの2億6,600万人の消費市場へのEU企業のアクセスを開く最大級の協定として支持を表明。「内容を精査する必要があるが、最終的にはEU側の権益を守り、バランスの取れた成果につながると信じている」と評価した。
また、欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は6月28日、ツイッターに「EU側が長く待ち望んでいた歴史的・戦略的な合意だ。EUとメルコスールが企業に開かれ、ルールに基づく貿易を推進することを世界に対して示した」と投稿した。ユーロチェンバースは6月27日付の声明でも、同協定の関税削減効果が、既に発効もしくは暫定適用を開始している「日EU経済連携協定(EPA)」と「EU・カナダ包括的貿易経済協定(CETA)」で期待される関税削減効果の合計を上回る点を強調し、早期妥結を求めていた。
このほか、欧州ワイン産業協議会(CEEV)も同協定を支持する立場だが、6月25日の時点で交渉妥結が近いとの認識を示し、EU側が対等の競争条件を確保するためには、ワインに対する関税を納得できる期間内に撤廃し、(メルコスールに対する)市場アクセスを改善すべきと指摘。ワインに対するGI保護の確保が同協定署名の条件、として注意喚起していた。
(前田篤穂)
(EU、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、メルコスール)
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