欧州中銀、年内は政策金利据え置き、新たな長期資金供給オペを導入

(EU、ユーロ圏)

デュッセルドルフ発

2019年03月08日

欧州中央銀行(ECB)は3月7日にフランクフルトで開催された政策理事会後の記者会見で、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)を0.00%、限界貸付ファシリティー金利〔オーバーナイト貸し出し(翌日返済)の金利〕を0.25%、預金ファシリティー金利〔オーバーナイト預け入れ(翌日満期)の金利〕をマイナス0.40%にそれぞれ据え置くと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。据え置きの期間については、「少なくとも2019年内、かつ、ECBが掲げる物価上昇率の目標値『2%未満でかつそれに近い水準』を持続的に達成するまでに必要な期間」とし、年内の政策金利引上げを見送る方針を明確にした。ECBは、これまで主要政策金利を「少なくとも2019年夏まで」維持するとの指針を示してきたが、世界的な景気の減退観測が強まっていることを受け、指針の変更を余儀なくされた(2019年1月25日記事参照)。

また、マリオ・ドラギECB総裁は記者会見の中で、新たな長期資金供給オペレーション(Targeted longer-term refinancing operations:TLTRO-III)を9月から導入すると発表した。TLTRO-IIIは2021年3月まで実施され、市中銀行に対し、償還期間2年の長期資金を各行の融資実績に応じて貸し出し、各行の融資を促す。ECBがTLTROを導入するのは、2014年、2016年に続き3回目。

記者会見と併せて発表されたユーロ圏に関するECBスタッフマクロ経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、2019年の実質GDP成長率を前回(2018年12月)予測値の1.7%から1.1%に、2020年については前回の1.7%から1.6%に下方修正した。2021年については1.5%の予測を維持した。消費者物価上昇率(HICP)については、2019年は前回の1.6%から1.2%に、2020年は前回の1.7%から1.5%に、2021年についても1.8%から1.6%にそれぞれ下方修正している。

表 ECBスタッフマクロ経済予測(前年比)

ユーロ圏の成長見通しを取り巻くリスクについて、ドラギ総裁は、「地政学的要因や保護主義の脅威、新興市場における脆弱(ぜいじゃく)性などの要素に起因する不確実性の持続により、依然として下振れ傾向にある」と指摘し、警戒感を強めている。

(森悠介)

(EU、ユーロ圏)

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