欧州委、ノー・ディールに備えて鉄道運行に関わる緊急対策を採択
(EU、英国)
ブリュッセル発
2019年02月13日
欧州委員会は2月12日、英国の合意なきEU離脱(ノー・ディール)シナリオを前提として、EU加盟国と英国を結ぶ鉄道運行の安全性・相互接続性を担保するための緊急対策案を採択した。EU側は「ノー・ディールのリスクが高まっている」と指摘。深刻な影響が想定される運輸・交通分野の緊急対策の整備を急いでいる。
当面、EU安全規格への英国の適合性認める
欧州委によると、緊急対策案では3カ月を上限に、EU・英国の鉄道インフラを支える(英国側の)部品やユニットなどのEU安全規格への適合性認証を認める方針だという。これにより、EU法に基づく安全規格への適合性認証の効果継続を認め、英仏海峡トンネルを通じて相互運行している「ユーロスター」などの当面の混乱を回避することが欧州委の狙いと考えられる。
ただ、欧州委は「EUの定めた要件を満たす安全基準を英国が維持・遵守することが条件」とも付言しており、ここでもEU側は相互主義(関連ブラック ジャック web)を英国側に求めている。欧州委は安全規格適合性のほか、鉄道車両操縦者運転免許、市場アクセスなどについてもEUルールに準拠した対応を求めるとしている。
欧州委は今回の緊急対策案について、「ノーディール・シナリオに伴う悪影響を完全には抑止できない」「(英国が)EU加盟国として認められて来た完全な権益や、離脱協定に定められる移行期間の好条件を担保するものではない」と指摘。緊急対策案があくまで限定的かつ一時的なものである点を強調している。欧州委は今回の緊急対策を英国の離脱翌日の3月30日までに施行するため、欧州議会やEU理事会との連携を図るとしている。
一方、2019年上期(1~6月)のEU議長国を務めるルーマニアは2月8日、ノー・ディールを念頭に、アイルランドとその他のEU加盟国の結ぶ海上交通網を整備する方針について、欧州議会と暫定合意した。この整備計画は汎(はん)欧州運輸ネットワーク計画(TEN-T)の中核回廊の1つに位置付けられるが、具体的にはアイルランド側のダブリン、コーク、シャノン・フォインズなどの港湾と、フランス(ル・アーブル、カレー、ダンケルク)、ベルギー(ゼーブリュージュ、ゲント、アントワープ)、オランダ(ロッテルダム、アムステルダム、テルネーゼン)などの港湾を直接接続する航路整備を進めるとしている。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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