ブレグジットに向けて着々と準備進めるEU
(EU、英国)
ブリュッセル発
2019年01月30日
英国議会で1月29日、EUと英国政府が合意した「離脱協定」に対する複数の修正案について採決が行われたが、欧州議会のブレグジット問題対策グループ(BSG)の座長を務めるギー・フェルホフスタット議員(ベルギー選出)は同日、「合意なき離脱(ノー・ディール)を拒否し、EU・英国の将来関係構築に向けた超党派での協議に望みを託す動きについては歓迎する」とツイッターに投稿した。
英国市民の短期滞在に関するビザ免除も相互主義が前提
また、フェルホフスタット議員は「(北アイルランド国境問題をめぐる安全策である)バックストップを含めて離脱協定案を見直し、再交渉に応ずる意見は欧州議会側では多数派ではない」との認識を示した。欧州議会は同日、英国議会での「離脱協定」に対する修正案の採決結果を踏まえ、欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官を交えてブレグジット問題についての審議を1月30日午後4時(中央ヨーロッパ時間)から行うと発表している。
他方、欧州議会の市民の自由・司法・内務委員会(LIBE)は1月29日、英国のEU離脱日以降、「あらゆる180日の期間内で最大90日間」までEU域内に短期滞在する英国籍を有する英国市民についてのビザ取得義務を免除する法案を圧倒的多数で承認した。今後、欧州議会(本会議)やEU理事会の承認も必要となるが、観光、商用、知人・親族訪問などの目的で、EU域内に渡航する場合にビザ取得を義務付けられない国・地域のリストに英国を加える方針を打ち出した。ただし、あくまで英国側が同等の措置をEU市民に認めることを条件とする相互主義の姿勢を明確にしている。
こうしたビザ免除措置は、アイルランドを除く全EU加盟国とシェンゲン圏を構成するアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスにも適用される。また、アイルランドは英国とはビザ免除措置を設けた独自の2国間協定を有している。
なお、同委員会は、ビザ免除が適用される場合でも、EU域内での就労を認めるものではないとも付言している。EU側は相互主義を前面に打ち出し、英国の離脱に対応する環境整備を着々と進めている。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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