ブレグジット交渉合意、英閣議で承認

(英国、EU)

ロンドン発

2018年11月15日

英国のEU離脱(ブレグジット)に関わる離脱協定と政治宣言の実務レベルでの合意文書が11月14日、英国の閣議で承認された。これを受けて、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は同日夜、欧州理事会(EU首脳会議)のドナルド・トゥスク常任議長に宛てた書簡を公表。離脱協定の署名と政治宣言の採択を行う欧州理事会緊急会合を開催する上での前提条件となる「決定的な交渉の進展」があったことを確認し、交渉を完了することを求めた(2018年11月15日記事参照)。

アイルランド公共放送RTEや英国BBCなど複数のメディアは11月13日夕方、実務レベルで合意した、と相次いで報じていた。これを受け英国内では、合意案が公表される前から、与党・保守党の離脱強硬派や野党・労働党から批判の声が上がっていた。

しかし、テレーザ・メイ首相は、5時間を超える臨時閣議で、閣僚の同意を勝ち取った。閣議が終了したのは午後7時過ぎで、予定されていたメイ首相の記者会見は取りやめとなり、質疑応答なしでの声明の発表となった。メイ首相は声明で、「これまでの交渉を経た中での最善の離脱協定案で、内閣が次の協議に進むことを決定する上で最善のものだと確信している」とコメント。その上で、「国民投票の結果を実現し、税、法、国境管理に対する主権を回復し、(他のEU加盟国との)人の移動の自由と決別し、雇用、治安、国家の統合を保護するこの合意か、あるいはノー・ディール(合意なき離脱)か、あるいは全くブレグジットしないのか。その選択だ」と強調した。

他方、閣議では異論も多く、10人前後の閣僚が合意内容に難色を示したという。11月14日には閣僚の辞任はなかったが、同月9日には合意に先立ち、EU残留派のジョー・ジョンソン交通担当閣外相が辞任しており、予断を許さない。離脱強硬派の中心人物であるジェイコブ・リースモグ議員は閣議終了後直ちに保守党議員への書簡を公表し、議会での否決を訴えた。離脱強硬派の一部では、メイ首相に対する不信任投票の実施を求める声も再び上がっている。

メイ首相は11月15日、議会に合意案を説明する。11月25日前後には欧州理事会緊急会合が招集され、離脱協定への署名と政治宣言の採択が行われる見込み。その後、舞台は英国に戻り、議会での攻防が最終段階を迎える。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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