欧州委、ブレグジット交渉の妥結を発表
(EU、英国)
ブリュッセル発
2018年11月15日
欧州委員会は11月14日、英国政府とのEU離脱(ブレグジット)交渉が妥結し、欧州理事会(EU首脳会議)に対して、交渉に「決定的な進捗があった」ことを勧告すると発表した。欧州委でEU側の交渉責任者を務めるミシェル・バルニエ首席交渉官は、交渉の妥結、すなわち英国政府が「離脱協定」草案を了承したことについて「決定的な一歩」と評価した。
北アイルランド国境問題に配慮
欧州委によれば、離脱協定の全ての側面について、双方の交渉官レベルで合意に達し、今後、離脱協定の締結に向けたプロセスに入る。双方の交渉官はEUと英国の将来関係の枠組みに関わる「政治宣言」の詰めの作業を続ける。
今後、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長がEU首脳会議を招集し、離脱協定および将来関係に関する政治宣言を承認する見通しだ。離脱協定については、EU理事会で承認された後、EU側では欧州議会の批准を求めることになる。
EUと英国は、懸案だった「アイルランドと北アイルランドの国境問題」について厳格な国境管理復活の回避で合意しており、移行期間終了までには将来関係に関わる協定の妥結を目指すとしている。移行期間は現在、2020年末までの予定とされているが、EU側は、将来関係に関わる協定妥結のめどを「2020年7月」としており、双方合意に基づく移行期間の延長も視野に入れるとしている。
なお、将来関係に関わる協定が妥結しないなどの事態に備えて、アイルランドと北アイルランド国境問題に関する安全策(バックストップ)として、EUは移行期間が終了する2020年末から、「(通商協定を含む)将来関係に関わる協定」が発効するまでの期間について、「EU・英国共通関税地域」を創設し、水産品を除く全ての商品について適用するとしている。この効果で、英国は移行期間終了後もEUの関税地域にとどまる格好となるため、アイルランドと北アイルランド国境地域における経済・社会の混乱回避に配慮している。ただし、EUはその前提として、公平な競争条件の担保を英国に求める姿勢だ。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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