自動車の232条調査に議会は慎重な対応求める

(米国、カナダ、メキシコ、EU、日本、韓国)

米州課

2018年06月01日

5月23日に米商務省が発表した1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく自動車と同部品の輸入に係る安全保障調査(関連ブラック ジャック トランプ)について、連邦議会の有力議員からは政党を問わず、政権に対して慎重な対応を求める声が相次いでいる。自動車価格上昇による家計への影響などマクロ経済への懸念のほか、自動車産業と安全保障との関係性に対する疑問、トランプ大統領の通商法の適用方針を牽制する声なども聞かれる。

上院で通商分野を扱う財政委員会のオリン・ハッチ委員長(共和党、ユタ州)は、「自動車に対する関税は、信頼できる自動車を必要とする米国の家族を直撃するもの」として、今回の調査を「著しく間違った方向に導く」との見方を明らかにした。同委員会で民主党の筆頭委員を務めるロン・ワイデン議員(民主党、オレゴン州)も、「232条調査の実施が米国の自動車産業の雇用と賃金を増やすための包括的な戦略の中でどのように作用するかについてまずは説明をしなければならない」と厳しく非難した。

下院で通商分野を扱う歳入委員会のケビン・ブレイディ委員長(共和党、テキサス州)も「米国の消費者に深刻な意味が含まれている」として「大きな懸念」を明らかにした。また、ジム・クーパー議員(民主党、テネシー州)は「テネシー州では、日産、フォルクスワーゲンなど外国企業は千人規模で雇用しており、州内における自動車産業を育成している。なぜ誰も望まない関税の導入を行う必要があるのか。消費者は値上げも選択肢が減ることも望んでいない」と述べた。

安全保障と自動車の関係性を疑問視

また、上院外交委員会のボブ・コーカー委員長(共和党、テネシー州)は、「合理的な者なら、自動車製造業が安全保障上の問題を抱えると考える者などいない」として調査趣旨に疑問を投じた。民主党の通商分野における有力議員であるハイディ・ハイトキャンプ議員(ノースダコタ州)も同様に、通商問題に国家安全保障を持ち出すことについて問題視する姿勢を明確に示した。

こうした中、上院国土安全保障・政府問題委員会のロン・ジョンソン委員長(共和党、ウィスコンシン州)は、経済問題に対して国家安全保障上の利害を持ち出す行政府に注意を呼び掛けつつ、「232条調査の実施を抑制するための法制度を検討する」ことについて反対しない可能性を示した。

(秋山士郎)

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