大統領、コンテ氏の閣僚人事案を拒否

(イタリア)

ミラノ発

2018年05月29日

セルジョ・マッタレッラ大統領から新首相として指名されたジュゼッペ・コンテ氏(2018年5月25日記事参照)は5月27日、閣僚人事案を大統領に提出した。しかし、大統領はパオロ・サボーナ氏を経済財政相とする人事案を拒否、コンテ氏は組閣および首相就任を断念した。大統領は元IMF高官のカルロ・コッタレッリ氏に政権の樹立を要請した。

コッタレッリ氏はイタリア銀行の調査部門やIMF財政局長などを歴任し経済・財政分野に明るい。組閣要請を受けたコッタレッリ氏は中立性を強調し、次回の総選挙や政争とは距離を置くとした。従って、閣僚案も実務家で構成されると予想される。今後、大統領への閣僚案の提出・承認の後、議会信任をもって正式に内閣発足となる。

コッタレッリ氏の内閣が上下両院の信任を得られた場合、2019年予算の成立および2019年の総選挙実施を目的とする暫定政権となるが、信任が得られなければ、再選挙は2018年8月以降に実施されると述べた、と複数メディアは報じている。両院ともコンテ氏による組閣を支持した五つ星運動(M5S)、同盟(Lega)の両党が過半数を占めること、フォルツァ・イタリアも不信任の意向を示していることを踏まえると、コッタレッリ氏による内閣が信任される可能性は高いとはいえない。

M5Sのルイジ・ディ・マイオ党首は大統領を弾劾する可能性を示唆したが、具体化するかは不明だ。また6月2日の共和国記念日にローマでデモを実施する意向を表明した。Legaのマッテオ・サルビーニ党首は強い反発を示しつつも、大統領弾劾には慎重な姿勢で、主要な関心は次回総選挙を見据えた選挙法改正にあるとの報道がみられる。

イタリア産業総連盟のビンチェンツォ・ボッチャ会長は、新首相に対する議会・政党の反応を注視するとし、政治対立の激化は経済減速のリスクであり憂慮すると表明した。

大統領の閣僚人事案の拒否による組閣断念は異例の事態で、今後の見通しを立てるのは容易でなく、情勢の注視が必要だ。

(山内正史)

(イタリア)

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