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(メキシコ)
米州課
2016年06月01日
メキシコ大蔵公債省は5月9日、連邦官報で2016年度の貿易に関する一般規則(SAT貿易細則)を改定する第1次決議を公布した。今回の改定で最も注目されるのは、国税庁(SAT)が行う複数ある企業認定制度の体系を整理し、恩典を再編成したことだ。これにより、一時輸入に際して付加価値税(IVA)を保税にするためのブラック ジャック 無料 ゲームが広がり、一時輸入滞留期間の36ヵ月への延長などの恩典も加わることになる。同改定決議の適用は翌日からだが、企業認定制度の再編成に伴う部分については、官報公示から30営業日後(6月20日)に発効する。
<IMMEX「B」と「D」を集約・廃止>
SATが貿易事業者を認定し、認定した企業に恩典を与える措置を開始したのは2002年末の税関法改正にさかのぼる。当時は輸入規模の大きな事業者を信頼に足る企業と認定し、通関手続きの円滑化や簡素化などの恩典を与える制度だった。しかし、2011年末のSAT貿易細則の改定に基づき、米国の「C-TPAT(テロ行為防止のための税関・産業界パートナーシップ)」などをモデルとした認可経済事業者(AEO)制度(新認定企業制度:NEEC)を導入したのを機に、それまでの認定企業の恩典を再編し、企業規模よりも物流セキュリティーに重点を置いた優遇制度に変更した(2011年12月26日記事参照)。
その後、2013年末の税制改正に基づき、保税加工プログラム(IMMEX)などを適用した一時輸入におけるIVAの保税(厳密にはIVAと同種の内国消費税である生産サービス特別税IEPSも保税対象)の恩典を、SATに認定された企業のみに限定するIVA・IEPS保税認定制度を2015年1月から導入した(2014年1月30日記事参照)。この結果、例えばIMMEX企業が対象となる企業認定制度としては、IVA保税のための認定と通関手続き円滑化・簡素化のための認定の大きく2種類が存在し、さらに通関手続き円滑化・簡素化のための認定においては、輸入額などの企業規模が基準となる認定(認定要件「B」および「D」)と物流セキュリティーのコンプライアンスが基準となる認定(認定要件「L」=NEEC)に分かれるという複雑な構造となっていた。今回の改定では、「企業認定スキーム登録制度(RECE)」という1つの大きな企業認定制度の下で重複する認定要件や恩典の統合、再整理を試み、認定制度の簡素化を図った。
本改定に基づき、IMMEX企業が対象となる認定制度は「IVA・IEPS」モダリティー(形態)と、「AEO」モダリティーの2種類に集約し、従来の通関手続き円滑化・簡素化のための認定要件カテゴリー「B」〔直近半年間の輸入額が2億ペソ(約12億円、1ペソ=約6.0円)以上〕および「D」(100人以上の従業員、25万ドル以上の設備・機器の保有など、第三者検証機関による検証が必要)を廃止した(表1参照)。ただし、現時点で「B」および「D」カテゴリーで認定を受けている企業は、現登録の有効期限(登録から1年間)までは現行恩典を利用できる。
<IVA・IEPS形態の保税以外の恩典を拡大>
改定後も通関手続き円滑化・簡素化のための認定において、企業規模が基準となる一般要件「A」は存続するが、その恩典は事実上消滅している。「A」の認定を受けるためにはIMMEX企業ではない必要があるが、同カテゴリーに適用される恩典はIMMEXオペレーションに関するものばかりだからだ。通関手続き円滑化・簡素化を主目的とする貿易事業者は今後「AEO」の認定を受ける必要があるが、IVA・IEPSモダリティーでも保税以外の通関手続き円滑化・簡素化の恩典が拡大されたため、IMMEX企業であれば、IVA・IEPSモダリティーの認定をまず検討すべきだろう。IVA・IEPSモダリティーの場合は登録に際して行政手数料はかからないが、AEOの場合は連邦公課法の第40条m)に基づき、2万4,506.67ペソの年間登録手数料が必要となる。また、IVA・IEPSモダリティーの場合は認定申請の法定審査期間が40営業日だが、AEOなどその他のモダリティーの場合は120営業日となっている。
今回の改定により、廃止された従来の認定企業カテゴリー「B」および「D」の恩典がIVA・IEPSモダリティーに移されたため、IVA・IEPSモダリティーの恩典が大きく拡大している(表2参照)。追加された恩典の中で最も大きな意味を持つのは、一時輸入滞留期間の18ヵ月から36ヵ月への延長だ。IMMEX企業は一時輸入した部品・原材料に加工などを加えた上で18ヵ月以内に再輸出するか、IMMEX登録を持つ他の企業に移転するか、輸入ステータスを一時輸入から確定輸入に切り替えて関税やIVAを支払うか、いずれかの処理を求められる。2010年末のSAT貿易細則の改定に基づき、通関手続き円滑化・簡素化を目的とした認定企業については、この一時輸入滞留期間が36ヵ月に延長されていたが、IVA・IEPS保税のための認定企業の恩典にはなかった。
そのほか、一時輸入申告における税関価格申告書(Manifestacion de Valor)提出免除や特定産業における申告義務の簡素化、違法状態の修正機会の提供など通関手続き円滑化や簡素化に資する恩典が追加されており、IVA・IEPS保税認定を受けるメリットは拡大されたといえる。認定要件は厳しいが、「AA」や「AAA」のカテゴリーになると、一般の企業はSATの許可を得て輸入申告後に1回しか修正できない輸入申告書の以下(1)~(4)のデータを、輸入申告後3ヵ月以内であれば何度でも許可を必要とせずに修正できる恩典が与えられているほか、SAT貿易細則別添24に基づくIMMEXプログラムの複雑な保税在庫管理要件が緩和される恩典もある。
(1)修正申告により輸入者が過払いした租税の還付が必要になる場合
(2)輸入品目の修正により非関税規制の対象となる、あるいはIMMEXプログラム上、特別な許可が必要な品目になる場合
(3)輸入ステータスの変更を求める場合
(4)乗用車の車両識別番号を修正する場合
<認定要件に大きな変更はなし>
今回の改定で、各モダリティーやカテゴリーの具体的な認定要件に大きな変化はない。最も利用が多いと思われるIVA・IEPSモダリティーの認定要件は添付資料のとおり。添付資料の「基本要件」というのは、IVA・IEPSモダリティーに限らず、「企業認定スキーム登録制度(RECE)」体系下の全ての認定を受ける際に求められる基本要件だ。
IVA・IEPSモダリティーの認定要件の1つとして、「株主、代表者、取締役などの租税義務に滞りがない」という要件が追加された。RECEの登録申請フォーマットと同入力ガイドによると、同要件では企業の株主、代表者、取締役をリスト化し、それぞれがメキシコで納税する義務があるかどうかを明記する。メキシコで納税義務がある株主などについては、SATが発行する税務義務履行証明(Opinion Positiva)が必要となる。メキシコにおける納税義務がない株主などは、納税義務がないことを証明する何らかの書類を用意すればよい。
IMMEX企業のIVA・IEPSモダリティー認定要件の1つに「直近12ヵ月の一時輸入額の60%以上について再輸出(バーチャル輸出を含む)すること」という要件があるが、従来は「再輸出」に加えて「輸入ステータスの変更」や「サービスの提供」も明示されていた。今回、明示的には「再輸出」のみが要件として記載されているが(第7.1.2.A.III)、RECEの申請フォーマットおよび入力ガイドをみると、従来どおり「輸入ステータスの変更」や「スクラップになった部分」なども60%の内数として計算に加えられる。この要件はIMMEX企業に輸出比率を義務付けているのではなく、12ヵ月以内に少なくとも60%以上の保税在庫について合法的な処理をし、保税管理の対象在庫から外している(「保税倉庫から出庫」している)という遅延なき在庫管理体制を求めている。
<IMMEX政令や経済省貿易細則との整合性に留意を>
今回の改定で、IVA・IEPSモダリティーの恩典が拡大したが、AEOでなければ得られない恩典というのは依然として存在する。例えば、米国との陸路国境に配置されたトラック貨物輸送専用レーンでのFAST(米国側)およびEXPRES(メキシコ側)レーンを利用することができるのは、AEOの認定を受けた企業のみだ。また、2010年末のSAT貿易細則の改定に基づき、IMMEX企業が国内で他のIMMEX企業からバーチャル一時輸入調達した部材の滞留期間は、直接外国から一時輸入した部材の滞留期間である18ヵ月ではなく6ヵ月となっているが(2011年2月15日記事参照)、認定企業の場合は36ヵ月となっていた。今回のSAT貿易細則の改定でバーチャル一時輸入調達した部材の滞留期間が6ヵ月に短縮されない例外として、「AEOのモダリティーでSATの認定を受けた企業」と規定している(第4.3.19則)。従って、IVA・IEPSのモダリティーの認定企業にとっては、自らが一時輸入した部材の一時輸入滞留期間は36ヵ月となるが、AEOのモダリティーの認定も同時に受けない限り、他のIMMEX企業からバーチャル調達した部材については6ヵ月の滞留期間しかないことになる。36ヵ月と6ヵ月で大きく異なるため、バーチャル調達した部材(「V1」コードで申告)と自社が外国から一時輸入した部材(「IN」コードで申告)とは、明確に分けて管理する必要があるだろう。
「認定企業」の恩典については、経済省の管轄であるIMMEX政令や経済省貿易細則との関係の整合性にも留意する必要がある。2016年1月6日に官報公示されたIMMEX政令の改定により、IMMEX企業の鉄鋼や繊維などセンシティブ品目の取り扱い要件が変更される予定だ(2016年1月22日記事参照)。現行制度では、センシティブ品目についても「認定企業」であれば特別な要件の履行が必要なく、また、サービスIMMEX(注)はセンシティブ品目を取り扱えないという規制も認定企業であれば対象外となっている。今回、認定企業制度が新しい体系下で再整理されたが、IMMEX政令や経済省貿易細則が定める「認定企業」とはどのモダリティーを指すのか、現時点で明確になっていない。経済省はIMMEX政令の改正が発効した後、60営業日以内に経済省貿易細則の改定を公布することとなっていたが、5月末時点でも細則改定の公布はない。同改定ではセンシティブ品目を一時輸入する場合の特別要件が定められる予定だが、センシティブ品目規制の対象外となる認定企業の定義についても何らかの明確化がなされるとみられる。
(注)輸出向け製造を行う企業(工業IMMEX)に対し、梱包(こんぽう)、修理、切断、裁断などの簡易な加工、在庫の保管・分配などのサービスを保税で提供する登録形態。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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