医療機器の現地輸入規則および留意点:香港向け輸出

質問香港における医療機器の現地輸入規則および留意点について教えてください。

回答

香港の衛生署(Department of Health)は、医療機器を担当する部門として、医療機器科(Medical Device Division。「MDD」)を設けています※1 。MDDは、後述の医療機器管理規制システム(Medical Device Administrative Control System。「MDACS」)の推進と、医療機器に関する長期的な法的規制枠組みの策定を担っています。MDDによれば、国際医療機器規制当局フォーラム(International Medical Device Regulators Forum。「IMDRF」)が推奨する分類スキームに従った医療機器のリスクに応じた措置を講じるリスクベース・アプローチを執ることが想定されています。

I. 香港における医療機器の規制枠組みの概要

香港において、2023年11月現在、医療機器の製造、輸出入、販売と香港内での機器の利用に関して直接的に規制する包括的な法令は制定されていません。しかしながら、対象となる医療機器の性質や特徴によっては、放射性物質取扱条例(Radiation Ordinance , Cap. 303)、薬剤業および毒薬条例(Pharmacy and Poisons Ordinance , Cap. 138)、電気通信令(Telecommunications Ordinance , Cap. 106)をはじめとする既存の法令に基づく規制が及ぶ場合があります。以下の表に、これら3法令の規制の概要等を纏めておりますのでご参照ください。

※1:MDDは、従前Medical Device Control Officeと呼ばれていた担当署が、2019年10月1日に名称変更されたものです

放射性物質取扱条例(Radiation Ordinance)
法令の概要 放射性物質および放射線照射装置(irradiating apparatus)の輸出入、所持、使用、放射性鉱物の試掘、採掘等を規制する。
規制内容および違反した場合のペナルティ 適法な許可に基づく場合を除き、何人も放射性物質または放射線照射装置の製造、販売、所持、使用を行うことを禁止している(第7条)。
これに違反した者は、HK,000の罰金および2年間の懲役刑に処せられる可能性がある。また、違反状態を故意に継続する場合、その期間の全部または一部につき、1日につきHK,500の罰金が追加される。
許可申請手続きの概要 医療機器が放射線照射装置に該当する場合には、本法令に基づく許可申請手続きを行う必要がある。 申請手続きは、所定の申請書のほか、放射線照射装置の技術仕様書その他必要書類を添付の上、申請にかかる放射線照射装置の評価書を提出する必要がある。 事案によってその期間は変わり得るが、申請者が必要書類を適時に提出することを前提とした場合、8週間程度で許可が付与される場合もある。
薬剤業および毒薬条例(Pharmacy and Poisons Ordinance)
法令の概要 香港において薬剤製品(pharmaceutical product)に分類される製品の販売および表示を規制する。
規制内容および違反した場合のペナルティ 香港で薬剤製品に該当する製品の販売、販売の申し出、流通、または販売もしくは流通その他使用目的での所持に先立ち、Pharmacy and Poison Boardに対して、所定の登録を行わなければならない。
これに違反した場合、HK0,000の罰金および2年間の懲役刑に処せられる可能性がある。
登録申請手続きの概要 医療機器であっても、本法令所定の薬剤製品の定義に該当する場合には、衛生署のDrug Officeに対して、以下のものを含む必要書類を添付の上、所定の申請書を提出する必要がある。
  • 事業登録証(business registration certificate)の電子コピー
  • 製造販売業者からの権限付与に係る委任状(authorization letter)(申請者に申請に係る製品を登録申請する権限を付与するもの)
  • 申請者による署名がなされた権限確認書
  • 製造業者が業許可を有していることを示す許可証の電子コピー
  • 関連する医薬品およびその製造業者に関するその他必要書類
登録に要する標準処理期間は、事案によってその期間は変わり得るが、申請者が必要書類を適時に提出することを前提とした場合、約6~9か月程度である。
電気通信令(Telecommunication Ordinance)
法令の概要 香港において電気通信を規制する主たる法律であり、電気通信サービスプロバイダーに対する許認可要件や、反競争行為の防止を目的とする競争法的規定等が定められている。
規制内容および違反した場合のペナルティ

無線通信を目的とする機器や材料もしくはかかる機器の構成部品、または電波を発生・放射するあらゆる種類の機器(その機器が無線通信を意図しているか、電気通信を可能とするものであるか否かを問わない)を取引または業務として取り扱うためには、無線販売業者免許(Radio Dealers Licence (Unrestricted))を必要とする(第8条)。
これに違反すれば、略式判決(summary conviction)を経た場合はHK,000の罰金および2年間の懲役刑に処せられる可能性が、起訴がなされ有罪判決を受けた場合はHK0,000の罰金および5年間の懲役刑に処せられる可能性がある。

無線通信装置の香港への輸入または香港からの輸出を実施する者は、原則として、無線販売業者免許(Radio Dealers Licence (Unrestricted))を保有していない限り、通訊事務管理局(Communications Authority)から許可証を取得する必要がある(第9条)。
これに違反すれば、略式判決(summary conviction)を経ることにより、HK,000の罰金および12か月間の懲役刑に処せられる可能性がある。

免許申請手続きの概要 無線販売業者免許の申請手続きは、所定の申請書のほか、事業登録書の写し、法人設立証明書(certificate of incorporation)の写しその他必要書類を、通訊事務管理局に提出する必要がある。
免許付与までに要する標準処理期間は、事案によってその期間は変わり得るが、申請者が必要書類を適時に提出し、免許付与に要する費用(2023年11月時点でHK,500)の支払いを行った場合、約2~3週間程度である。

なお、香港において医療機器の上市前管理(pre-market control)や上市後の有害事象報告に相当する仕組みが構築されていない等の現在の状況を踏まえ、上述のとおり、MDDにおいて、長期的な法的規制枠組みの策定が検討されています。
この長期的な法的規制枠組みへの移行促進のため、香港政府は、2004年11月、自主的な医療機器管理規制システムであるMDACSを立ち上げました。このMDACSに基づき、(1)リスティングシステム(安全性や効能の基準に適合していることが確認された医療機器のリスト、ならびに輸入業者、販売業者および国内製造業者等のリスト)の構築、(2)医療機器のリスティングにあたっての地域責任者(Local Responsible Persons)の指定、(3)有害事象報告制度が導入されました。

(1)リスティングシステムの構築

MDACSの要件に適合していることが認められた医療機器のリスト、輸入業者、販売業者、現地製造業者および地域責任者等のリストについては、MDDのウェブサイト(「Search Database」)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて公開されています。

(2)医療機器のリスティングにあたっての地域責任者の指定

医療機器のリスティングの申請を行う場合、地域責任者を指定する必要があります(なお、後記IIIのとおり、ブラック ジャック 賭け 方を行うことができる者は、地域責任者に限定されています)。地域責任者は、医療機器のリスティングの申請にあたって、MDDに対して必要な情報やサンプルの提供を含めた当該申請に関連する義務を負い、リスティング後は医療機器を市場に流通するにあたっての責任者とみなされます。また、市販後は、顧客からの苦情対応や有害事象の報告・調査、リコール対応等の義務を負うことになります。

医療機器に関する地域責任者となる者は、以下の要件をいずれも満たす必要があります。

  • 香港で設立された法人、または香港で事業登録された自然人もしくは法人のいずれかであること
  • 対象となる医療機器の製造業者であるか、または対象となる医療機器の地域責任者としての義務を履行することに関して当該医療機器の製造業者の支持(support)を受けていること

(3)有害事象報告制度の導入

リスティングがなされている医療機器に関して報告対象の有害事象が香港において発生した場合、地域責任者が、当該有害事象の調査を行った上で、MDDに対して、当該有害事象の報告を行わなければなりません。

II. 香港における医療機器

1. 医療機器の定義

MDACSにおける医療機器とは、MDACSが公表するガイダンスノート(Definitions and Abbreviations for the Medical Device Administrative Control System」(Guidance Notes: GN-00))PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(113KB) において、以下のとおり定義がなされております。

人に対し、以下に列挙するいずれかの目的で、単独または組み合わせて使用することが製造業者(manufacturer)において意図された器具、装置、道具、機械、歯列矯正器具(appliance)、インプラント、インビトロの試薬またはキャリブレーター、ソフトウェア、材料またはその他類似もしくは関連する物品

  1. 疾病の診断、予防、モニタリング、治療または緩和
  2. 怪我の診断、モニタリング、治療もしくは緩和または怪我の補償
  3. 解剖学構造もしくは生理学的プロセスの調査、置換、変更またはサポート
  4. 生命の支援または維持
  5. 受胎のコントロール
  6. 医療機器の消毒
  7. 人体由来の検体の対外検査による医療または診断目的の情報の提供(薬理学的、免疫学的、または代謝的手段によって人体内または人体上で意図された主要な作用は達成されないが、かかる手段によって意図された機能が補助される可能性があるもの)

なお、MDACSが公表するガイダンスノート(「Overview of Medical Device Administrative Control System」(Guidance Note: GN-01))PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(233KB) によれば、一部の製品は、上記の医療機器の定義を満たしていると解されるものであっても、現時点におけるMDACSの対象機器から除外されています。詳細については、当該ガイダンスノートのセクション3.2「Scope of the MDACS」をご参照ください。

2. 医療機器のクラス分類について

香港の医療機器に関するクラス分類については、リスクレベルを基にした、4段階の分類システムを採用しています。具体的な考え方については、一般の医療機器(General Medical Devices)および体外診断用(IVD)医療機器それぞれにつき、MDACSが公表する以下の資料をご参照ください。

以下表は、一般用医療機器に関するクラス分類の例を示すものです。

分類 リスクレベル 機器の一例
I 低(Low Risk) 外科レトラクター / 舌圧子
II 低 – 中(Low-moderate Risk) 皮下注射針 / 吸引装置
III 中 – 高(Moderate-high Risk) 肺人工呼吸器 / 骨固定プレート
IV 高(High Risk) 心臓弁 / 植え込み型除細動器

III. ブラック ジャック 賭け 方について

MDDのウェブサイト(「Medical Device Listing Application」)新しいウィンドウで開きます において、ブラック ジャック 賭け 方にかかる申請フォームや申請にあたってのガイダンスノートが公開されています。申請にあたっては、同ウェブサイトで公開されている各資料を確認の上、申請フォームその他申請に必要となる書類の準備を行うことになります。
なお、ブラック ジャック 賭け 方を行うことができる者は、地域責任者に限定されていますので、地域責任者のリスト掲載が未了の場合、地域責任者のリスト掲載の申請とブラック ジャック 賭け 方を併せて行う必要があることに留意が必要です。

IV. 衛生署調達に関する新たなプログラム

衛生署は、2023年6月21日から、医療機器の調達に関して新たなプログラムを実施することを発表しました。この新たなプログラムによれば、衛生署は、2023年6月21日より、MDACSに基づく医療機器のクラス分類においてクラスII~IVの一般の医療機器およびクラスB~Dの体外診断用(IVD)医療機器につき、MDACSにおいてリスティングが行われている一般の医療機器および体外診断用(IVD)医療機器を優先的に調達するとのことです。衛生署のサービスに対する医療機器の供給に向けた入札や見積りに関心がある場合、ブラック ジャック 賭け 方外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが推奨されております 。なお、2023年10月17日付けでMDDのウェブサイト上でアップデートされたアナウンスメントでは、衛生署および政府物流服務署(Government Logistics Department)がそれぞれ作成するサプライヤーリストへの掲載方法が言及されています。

新たなプログラムの発表に併せて公表された衛生署の資料によれば、同じ最低見積額で入札が複数行われた場合は、MDACSにおいてリスティングが行われている医療機器が優先されること、入札対象の医療機器の技術評価の場面においてMDACSにおいてリスティングが行われている医療機器に加点がなされ得ることが示されています PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(162KB)

このプログラムは、現状、衛生署調達に限定したものとなりますが、医療機器のリスティングの義務化に向けた動きが促進される可能性に言及する報道もあり、衛生署における規制動向に引き続き注視が必要と思われます。

V. 戦略物資(Strategic Commodities)としての規制

医療機器の中には、戦略物資(strategic commodities)として分類され、輸出入条例(Import and Export Ordinance, Cap. 60)およびImport and Export (Strategic Commodities) Regulations (Cap. 60G)の規制を受ける可能性があるものがあります。
工業貿易署(Trade and Industry Department)が提供する事前分類サービス(pre-classification service)を通じて助言を得る方法、公開されている戦略物資管理リスト(strategic commodities control list)を確認する方法などによって、戦略物資に該当するか否かを確認することができます。

戦略物資に該当する医療機器を香港に輸入するにあたっては、輸入許可を得る必要があります。かかる輸入許可の申請は、工業貿易署の統合カスタマーサービスセンター(Integrated Customer Service Centre)に対して、対象となる医療機器の技術情報、仕様書、カタログ、ブローシュア等の添付書類を添えて、所定の申請書を提出することになります。

関係機関

関係法令

参考資料・情報

香港衛生署:
FAQ 香港衛生署(Department of Health) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2016年12月
最終更新:2023年11月

※本記事は、日本貿易振興機構(ブラック ジャック 賭け 方)香港事務所が中小企業海外展開現地支援プラットフォーム事業による調査として、岡田律師事務所に作成委託し、2023年11月に入手した情報に基づくものであり、その後の法律改正などによって変わる場合があります。

掲載した情報は作成委託先の判断によるものですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。また、本記事はあくまでも参考情報の提供を目的としており、法的助言を構成するものではなく、法的助言として依拠すべきものではありません。本記事にてご提供する情報に基づいて行為をされる場合には、必ず個別の事案に沿った具体的な法的助言を別途お求めください。

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記事番号: N-170302

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