ブラック ジャック サイト向けに米ドル建ての送金を行う際の制限
質問
ブラック ジャック サイト向けに米ドル建ての送金を行う場合、米国の外国資産資金管理法(Foreign Assets Control Regulations)などによる送金制限があると聞きました。その概要を教えてください。
回答
I. OFAC規制
米国には外国資産管理法(Foreign Assets Control Regulations)という法律があります。米国大統領が、国家の安全保障を脅かすものと指定した国や法人、自然人などをSDN(Specially Designated Nationals and blocked Persons)リストとして公表すること、および同リストに記載された制裁対象が米国内に保有する資産を凍結できること等について規定しています。
この法律によって、米国人(米国法人、米国籍保有者、米国居住者)には、資産凍結の義務が課せられ、義務を怠った場合には厳しい罰則が科せられます。この法は、米国の外交・国家安全保障政策に基づく経済・通商制裁プログラム(Economic and Trade Sanctions Programs)を管理・運営する米国財務省外国資産管理局(Office of Foreign Asset Control:OFAC)によって執行されていることから「OFAC規制」と呼んでいます。
II. SDNリストの適用
- 順守義務者
米国銀行の米国内およびブラック ジャック サイト拠点だけでなく、米国内で営業する日本など外国籍の銀行支店やその米国現地法人にも「OFAC規制」にもとづくSDNリストとの照合と資産凍結等の順守義務が課されています。また、米国に拠点を持たない日本の銀行は直接的な同規制の順守義務はありません。
しかし米ドル建ての送金の場合、資金決済などで上記の順守義務のある銀行を経由せざるを得ず、資産凍結などによる送金遅延などのトラブルが発生する可能性があるので、そのような問題を事前に防止するため、同規制に準拠したSDNリストとの照合を行っています。すなわち米国に拠点を持たない日本の銀行にも間接的な順守義務があるといえます。 - SDNリストとの照合の対象となる送金
米ドル建ての送金であれば「OFAC規制」の対象になります。その送金における送金依頼人・送金受取人だけでなく、その送金を取り扱うすべての銀行(送金銀行、受取銀行、経由銀行、決済銀行など)について、その当事者とその所在国が大統領令で指定された国・法人などでないことを確認するためSDNリストとの照合を行います。また、米国に直接送金する場合だけでなく、米国以外の国に送金する場合(例、中国向けの米ドル建て送金や日本国内のドル建て送金など)あるいは第三国を経由した送金も対象となります。 - SDNリストとの照合
SDNリストとの照合は、通常、銀行ごとに特別なシステムによって行われています。SDNリストには制裁対象者の正式名称だけではなく略称・通称や旧名も記載されています。照合にあたってはリストの記載と100%一致するものだけでなく一定割合が一致しているものについても制裁対象者でないことの確認を行わねばなりません。日本の企業は送金を英文表記で行いますが、略称表現あるいは英語に置き換えた表現がSDNリストの制裁対象者ではないかと思われる場合は送金が止められることがあります。この場合、送金を留保した米国系銀行等の順守義務者から、送金を取り組んだ銀行を経由して照会や確認事項の依頼があるので、速やかに対応することが肝要です。 - SDNリストの内容
外国資産管理法の規制対象には、国別の制裁と分野別の制裁があります。これらを反映するSDNリストの内容詳細は文末の OFAC Sanctions Programs で確認してください。
III. 送金資金が凍結された場合の対応
「OFAC規制」により、送金資金が凍結された場合、当該資金は米国財務省外国資産管理局(OFAC)の許可がない限り返還されません(ただし所有権は元の所有者に帰属したままです)。送金資金が凍結された場合は、送金銀行を通じて、その送金が「OFAC規制」の制裁対象となるものではないことを説明する十分な資料を提出しなければなりません。従って、送金資金が返還されるまでには相当の日数と返還交渉のための労力を要することになります。
IV. 「OFAC規制」の留意点(調査時点での動向)など
- 2011年7月には日本の「ヤクザ(YAKUZA)」など暴力団に関連する組織名が多国籍犯罪組織としてSDNリストに記載され、2012年2月にはその主要人物名が追加されました。
- かつて「OFAC規制」の対象国だったミャンマーとの取引については、2011年から段階的に解除されてきました。しかし軍関係者や特定個人およびその所有企業に対する規制は2012年7月に範囲が拡大されています。中には有力企業も含まれており、ミャンマーの取引相手が規制対象でないかの確認は引き続き必要です。
- キューバとの取引は1961年4月より厳しい規制対象下にあります。米国オバマ前政権時、同国と国交正常化に向けて交渉を開始すると発表しましたが、2019年9月トランプ大統領は、規制を強化する事を発表しています。
- 北朝鮮は1988年にテロ支援国家として指定され、2008年10月に指定が解除されました。しかし米国企業へのサイバー攻撃等により2014年12月オバマ大統領はテロ支援国家に再指定することを発表しました(日本は拉致問題があるため北朝鮮に対し独自に経済制裁を行ってきましたが、2014年7月に一部制裁を解除しました)。
- イランは核開発疑惑により、2006年12月の国連安保理の決議以降、段階的に経済制裁が強められましたが、2015年7月14日に国連安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた6ヵ国(P5+1)と共同包括行動計画(JCPOA)について最終合意し、2016年1月16日に制裁解除が発表されました。しかし、2018年5月に米国のトランプ大統領は、JCPOAからの離脱を発表し、11月より経済制裁を全面的に再開しました。イランとの取引にあたっては最新のOFAC規制を確認されることを強く推奨します。
- このように「OFAC規制」は機動的に行われ、また頻繁にSDNリストが更新されているので送金などの取引にあたっては最新の情報を確認することをご推奨します。最新の情報はOFACのウェブ・サイトや取引銀行への問い合わせで得られます。
関係機関
参考資料・情報
- 米国財務省:
- SDN(Specially Designated Nationals and Blocked Persons)List
- OFAC Sanctions Programs
- Frequently Asked Questions and Answers
調査時点:2016年1月
最終更新:2020年3月
記事番号: A-011104
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