知財判例データベース非侵害とされた下級審判決を覆し、ブラック ジャック ディーラー

基本情報

区分
特許
判断主体
大法院
当事者
原告(被上告人、侵害被疑者) vs 被告(上告人、特許権者)
事件番号
2023ダ289508特許侵害差止請求権不存在確認請求(特)
言い渡し日
2024年10月31日
事件の経過
破棄差戻し

概要

下級審は、請求の範囲に記載された「貫通型軸孔」に対応する侵害製品の金属円筒柱は、その孔の底が開放された形状ではなく「貫通型軸孔」に該当するとはいえないとして非侵害であると判断ブラック ジャック ディーラーが、大法院は、利用侵害の法理に従い侵害に該当すると判断ブラック ジャック ディーラー。

事実関係

本件は、原告が製造販売する製品は被告の特許発明の権利範囲に属さない旨の確認を求める特許侵害差止請求権不存在確認請求の訴えに関するものである。被告の特許発明は赤外線加熱調理器に関し、その請求項1の構成は次のとおりである。

【請求項1】
上面中央に貫通型軸孔(11)が形成され、片側に電源を制御するスイッチ(15)が備えられた受け台(10)(以下「構成要素1」)と、
上面に飲食物を盛ることができる円板状容器として、釜蓋を裏返して高い形態で下へ突き出し、下面中央には上記軸孔(11)に分離可能に挿入される軸突起(21)が形成されており、上記軸突起(21)と上記軸孔(11)の挿入結合により上記受け台(10)上段に回転可能に設けられ、赤外線を受けると加熱する回転パン(20、20')(以下「構成要素2」)と、
(中略)赤外線加熱調理器。

上面中央に貫通型軸孔が形成され、片側に電源を制御するスイッチが備えられた受け台と、上面に飲食物を盛ることができる円板状容器として、釜蓋を裏返して高い形態で下へ突き出し、下面中央には上記軸孔に分離可能に挿入される軸突起が形成されており、上記軸突起と上記軸孔の挿入結合により上記受け台上段に回転可能に設けられ、赤外線を受けると加熱する回転パンがある赤外線加熱料理器。 上面中央に貫通型軸孔が形成され、片側に電源を制御するスイッチが備えられた受け台と、上面に飲食物を盛ることができる円板状容器として、釜蓋を裏返して高い形態で下へ突き出し、下面中央には上記軸孔に分離可能に挿入される軸突起が形成されており、上記軸突起と上記軸孔の挿入結合により上記受け台上段に回転可能に設けられ、赤外線を受けると加熱する回転パンがある赤外線加熱料理器。

これに対し原告製品は、下記写真のように受け台(「下部ベース」という)に特許発明の貫通型軸孔(11)に対応する金属円筒柱が形成され、回転パンの軸突起(下記写真にはない)が挿入される構造であり、金属円筒柱の内部にモータに連結された多角軸等が配置され、その底が塞がっている構造からなっている。

受け台(下部ベース)の拡大写真。 受け台にブラック ジャック ディーラー貫通型軸孔(11)に対応する金属円筒柱が形成され、回転パンの軸突起(下記写真にはない)が挿入される構造であり、金属円筒柱の内部にモータに連結された多角軸等が配置され、その底が塞がっている構造からなっていることが分かる写真。

原告は、原告製品の金属円筒柱はその底が塞がっており、特許発明の「貫通型軸孔」を備えていないため、特許発明の権利範囲に属さないと主張ブラック ジャック ディーラー。

原審判決(侵害否定)

(1)辞典的に「貫通」は「貫き通る」ことを意味し、「軸孔」は「軸の機能をする孔」を意味するものである。被告は、原告の特許発明に対する無効審判手続において、本件請求項1の発明に対し「貫通型」等の記載を追加する訂正請求をブラック ジャック ディーラー。被告が上記訂正請求の当時に提出ブラック ジャック ディーラー訂正請求書によると、構成要素1における「軸孔」を貫通型に限定ブラック ジャック ディーラーのは、本件特許発明の明細書の記載と、軸孔下部が塞がっておらず開いている形態として示ブラック ジャック ディーラー図を根拠として請求の範囲を減縮ブラック ジャック ディーラー旨が記載されている。このような被告主張の訂正理由、本件特許発明の明細書と図面の内容、及び、原告が上記特許審判事件による審決の取消しを求めて被告を相手取って提起ブラック ジャック ディーラー特許法院事件における当事者らの主張と上記事件の判決内容等を総合してみると、本件特許発明において構成要素1の受け台の上面中央に形成された「軸孔」を「貫通型」に限定ブラック ジャック ディーラーのは、軸孔の底を、塞がっておらず貫通する形状に形成することにより、軸孔に焼き物用回転パン(20')の軸突起を挿入結合し、肉類や魚類等を焼くときに発生する油を軸突起に形成された油排出孔(22)に沿って受け台(10)の内部に配置された油受けボックス(12)に排出するためと解釈されると共に、軸孔の底が塞がっている形状は、本件特許発明の請求の範囲から意識的に除外ブラック ジャック ディーラーとする余地が十分ある
ブラック ジャック ディーラーがって、「貫通型軸孔」は「底が塞がっておらず開いている形状を有する」軸の機能をする孔を意味し、本件請求項1の発明における「貫通型軸孔」は受け台上方の表面中央に形成されるものであり、回転パン下方の底中央に形成された軸突起と分離可能に挿入・結合し、軸突起に形成された油排出孔に沿って油排出が可能であることをその技術的範囲とすると認めることが妥当である。

(2)構成要素1の「貫通型軸孔」に対応する原告製品の「金属円筒柱」は、その内部に多角軸が備えられており、回転パンの下部中央の軸突起が金属円筒柱に分離可能に挿入され、軸突起に形成された多角溝が上記金属円筒柱の内部の多角軸と結合する構造である。一方、上記金属円筒柱の上端は回転パンの軸突起が分離可能に挿入可能に開いている形状を有しているとしても、その下端には多角軸と連結されるモータ等が配置されており、金属円筒柱の底が開いている形状を有しているとは認められない
ブラック ジャック ディーラーがって、原告製品は金属円筒柱の下にモータ等が設けられている以上、構成要素1に係る技術的特徴、すなわち、回転パンの軸突起が分離可能に挿入・結合される金属円筒柱の底が塞がっておらず開いている形状を有することにより、軸突起に形成された油排出孔に沿って油排出を可能にする技術構成を同一に含んでいるとはいえない。

(3)これに対して被告は、原告製品において金属円筒柱の下方に位置ブラック ジャック ディーラーモータ等を除去する場合、金属円筒柱自体は底が塞がっていないまま下部が開いている構造であり、原告製品において付加的構成である「多角軸が備えられたモータ」に代えて「油受けボックス」を配置することにより油を収容することができるため、本件原告製品の金属円筒柱は「貫通型軸孔」に該当する旨を主張する。

(4)詳察ブラック ジャック ディーラーところ、前述のとおり原告製品は、モータの回転動力を利用して回転パンを自動で回転させることもその主要な特徴の1つとして製作されているといえるところ、原告製品においてモータ等の一部部品が分離された状態では、原告製品の上記のような技術的特徴が正しく表出されるとはいい難い。また、原告製品を使用する一般の使用者がモータ等を任意に除去することが容易であるとはいえないのみならず、そのように分離して原告製品を使用する特別な事由等も見出し難い事情等を勘案すると、原告製品のモータ等を任意に分離ブラック ジャック ディーラー状態において本件請求項1の発明の構成要素と対比することはできないと判断される(非侵害)

これについて被告(特許権者)は不服とし、上告を提起ブラック ジャック ディーラー。

判決内容

(1)法理
当事者が製造等をする製品又は使用する方法(以下「侵害製品等」という)が特許発明の特許権を侵害するといえるためには、特許発明の請求の範囲に記載された各構成要素と、その構成要素間の有機的結合関係とが侵害製品等にそのまま含まれていなければならない(大法院2019年1月31日言渡2018ダ267252判決等参照)。侵害製品等が特許発明を利用する場合には、特許発明に対する特許権侵害に該当するが(特許法第98条)、このような利用関系は、侵害製品等が特許発明の構成に新たな技術的要素を付加するものであり、侵害製品等が特許発明の要旨を全部含み、これをそのまま利用して侵害製品等内に特許発明の発明としての一体性を維持する場合に成立する(大法院2015年6月11日言渡2015ダ204588判決、大法院2019年10月17日言渡2019ダ222782、222799判決等参照)。

(2)判断
<1>本件請求項1の訂正発明の請求の範囲における文言の一般的な意味内容に基づいて発明の説明と図面を参酌すると、受け台(構成要素1)の「貫通型軸孔」は「受け台の上面中央に形成されて軸の機能を行い、回転パンの下面中央に形成された軸突起が挿入されるか、又は分離され得る孔により底が塞がっておらず開いている形状を有するもの」であり、回転パン(構成要素2)の「軸突起」は「回転パンの下面中央に形成されて軸の機能を担い、受け台の上面中央に形成された貫通型軸孔に分離可能に挿入結合する部分として突起形状を有するもの」と解釈される。本件請求項1の訂正発明の請求の範囲においては回転パン(構成要素2)の下面中央に形成された軸突起の油排出孔の具備に対しては限定していないため、その軸突起を油排出孔が形成されているものとして制限して解釈することはできない

<2>原告製品の金属円筒柱は、下部ベースの上面中央に形成され、回転パンの下面中央に形成された軸突起が挿入又は分離され得る孔を有し、軸の機能を行うパイプ形態の構成要素であり、それ自体の上面と下面は開放されている形状である。
原告製品において「モータ・多角軸・多角溝」と「金属円筒柱」は機能が異なる別個の構成要素であるため、モータ等が金属円筒柱の下端に配置されている事情のみにより原告製品の金属円筒柱が底が塞がっている形状であるということはできない

<3>原告製品の金属円筒柱は、下部ベースの上面中央に形成されて軸の機能を担い、回転パンの下面中央に形成された軸突起が挿入又は分離され得る孔を備えており、底が塞がっておらず開いている形状であるため、本件請求項1の訂正発明の貫通型軸孔と実質的に同一である。原告製品は、回転パンの下面中央に形成された軸突起が下部ベースの上面に形成された金属円筒柱に挿入された場合、回転パンが下部ベース上に回転可能に設けられる。このように原告製品は、本件請求項1の訂正発明の構成要素1、2を含んでいる。

<4>原告製品の下部ベース又は回転パンに備えられるか又は形成されたモータ・多角軸・多角溝、多数の油排出孔は、本件請求項1の訂正発明の技術的構成に付加された新たな技術的要素であり、モータの回転動力伝達手段や油排出手段が追加されたものに過ぎない。本件請求項1の訂正発明が有する、双方向加熱方式により飲食物全体に均等に火が通るようにし、調理目的に応じて回転パンを交換して使用できる作用効果は、原告製品においてもそのまま実現され得る。

<5>上記のような事情を先の法理に照らして詳察すると、原告製品は、本件請求項1の訂正発明の請求の範囲に記載された各構成要素とその構成要素間の有機的結合関係を全部含んでおり、これをそのまま利用して原告製品内において本件請求項1の訂正発明が発明としての一体性を維持している。ブラック ジャック ディーラーがって、原告製品は、本件請求項1の訂正発明を利用し、その特許権を侵害する製品に該当する

専門家からのアドバイス

本件は赤外線加熱容器に関する特許発明において、その権利範囲に原告製品が属するか否かが争点となった。
本件の下級審(地方法院及び特許法院)の段階では、特許発明における「貫通型軸孔」は無効審判における訂正請求を通じて「貫通型」が付加されたという事情等を参酌し、原告製品において底が塞がっている金属円筒柱は特許発明の「貫通型軸孔」には該当しないと判断された。すなわち、特許発明の訂正による意識的除外の法理を適用し、その権利範囲を多少制限解釈ブラック ジャック ディーラーものであった。
これに対し大法院は、意識的除外に該当するかについては言及せずに、利用侵害について判断をブラック ジャック ディーラー。大法院は、原告製品の金属円筒柱はそれ自体では底が開いている構造であるため特許発明の「貫通型軸孔」に該当し、原告製品はそれに加えて底に多角軸を付加ブラック ジャック ディーラーものに過ぎず、原告製品においても貫通型軸孔(金属円筒柱)に軸突起を挿入して回転可能に支持する特許発明の効果はそのまま具現されるため、利用侵害に該当すると判断ブラック ジャック ディーラー。
本件のような機械装置に関する発明において利用侵害が取り扱われた事例は韓国で多くはないが、利用侵害が争点になる事案においては参考に値する事例であると思われる。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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