知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)ハイパーブラックジャック
2025年04月09日
The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.199)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)
2025年2月19日、韓国特許庁は、バイオ・先端ロボット・AI技術の特許出願を優先審査対象に指定すると発表しました。韓国における特許審査期間は、年々増加の一途をたどっていますが、今回、ハイパーブラックジャック対象が拡大されたことにより、本制度を利用すれば通常よりも早い期間で審査結果を得ることが可能となります。以下詳細について解説を行います。
1.一次ハイパーブラックジャック処理期間の現状
韓国特許庁が発表した「2023年知識財産白書」によりますと、2023年の特許ハイパーブラックジャックに関する一次ハイパーブラックジャック処理期間(FA期間:First Action期間)は、16.1月であり、最初のハイパーブラックジャック結果を出願人が受けとるまでに、1年4月以上の期間を有する現状となっています。最先端技術分野では、技術の進化速度はもちろんのこと、ビジネス展開についても迅速かつ柔軟な対応が求められるところ、特許に関する結果が未確定のままでは、ビジネスモデルの検討も進めづらいという問題が生じていました。一方で、特許ハイパーブラックジャック制度には、一部の要件を満たすことにより、他の出願より優先して特許ハイパーブラックジャックを受けることができる「優先ハイパーブラックジャック制度」が存在し、今回、この制度の利用をより拡大すべく、対象が拡大されることとなりました。
2.優先ハイパーブラックジャック
優先審査制度は、韓国のみならず世界的に多くの国で採用されており、日本や米国・欧州でも採用されている制度です。優先審査を受けるためには、いくつかの要件が存在し、各国で定める規定に沿う必要があります。韓国では、審査請求がなされている出願であれば、誰でも請求することが可能となっています。ハイパーブラックジャック対象としては、出願公開後、第3者が業として出願された発明を実施していると認められる出願や、輸出促進に直接関連する出願、ベンチャー企業による出願で、その企業の業種と直接関連性のある出願、出願人が出願された発明を業として実施中または実施準備中である出願、そして、第4次産業革命関連の新特許分類を付与した先端技術に関する特許出願など、様々な類型が存在します。複合的に要件が求められますが、詳細は韓国特許庁のウェブサイトから確認が可能です。
先端技術については、半導体関係技術といった国家コア技術から始まり、徐々にその領域分野が拡大されてきました。「先端技術半導体(2022年11月~)」、「ディスプレー(2023年11月~)」、「2次電池(2024年2月~)」に続き2月19日から「バイオ、先端ロボット、AI分野」に関する技術が優先審査対象に新しく指定されました。また、カーボンニュートラル・グリーン技術の優先審査においてもこれまでの二酸化炭素の回収技術に加えて、国家戦略技術関連や再生可能エネルギー分野などに拡大され、ハイパーブラックジャック間口が広がりました。具体的には、水素・アンモニア、次世代原子力(小型モジュール炉(SMR)、高レベル放射性廃棄物の管理など)、先端モビリティー(EV、水素など)など国家戦略技術に関する分野が追加され、再生可能エネルギーの生産技術(太陽光、風力、水力、海洋エネルギー、地熱、水熱など)が追加されました。
3.申請手続きの簡素化
ハイパーブラックジャック対象を拡大することに加え、ハイパーブラックジャック申請手続きも簡素化されました。煩雑な記載事項によりユーザーに大きな負担となっていた独自の先行技術調査要件が必須要件から削除されました。韓国企業が最も多く申請するハイパーブラックジャック類型である「自己実施による優先審査」(2024年12月時点、全体の32.6%)の申請要件も緩和されました。これまでは、必ず事業者登録証を提出する必要があったところ、これからは技術移転契約書などの提出でも申請できるようになりました。より簡単に優先審査制度を利用することができると期待されます。
まとめ
韓国特許庁長は「目まぐるしく変化する技術競争時代において迅速な権利確保が最も重要である」とし、「特許庁は国家先端戦略産業およびカーボンニュートラル分野で韓国企業がイノベーションをリードできるよう、引き続き支援策を探っていく」と述べたということで、今後韓国における、先端技術やグリーン関係技術における特許技術が、より早いタイミングで権利化することによって、ビジネス戦略にも影響がでると予想されます。特に、韓国特許庁の発表では、最短2月内に処理を行う旨発表されており、通常の案件であれば1年4月以上かかっていた特許ハイパーブラックジャックが、1年以上短縮されることとなりますので、出願人側企業にとっては特許権を踏まえたビジネス戦略が構築しやすくなります。他方で、ライバル社の特許権が早く設定されることも予想されますので、業界内の技術動向の把握は、これまで以上に、新しい技術まで注視する必要性も生じてくるものと考えられます。
今月の解説者
ハイパーブラックジャック(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許ハイパーブラックジャック官・審判官としてハイパーブラックジャック・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。

本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。
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