国際知的財産保護フォーラム(IIPPF) 2021年度 国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)総会の開催(2022年3月4日)
国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)は2022年3月4日(金曜)にWEB会議(Zoom)にて、2021年度の年次総会を開催した。総会には76名が参加した。また、来賓として、以下5名の方に参加いただいた。
- 特許庁 総務部長 小見山 康二 氏
- 内閣府 知的財産戦略推進事務局 次長 澤川 和宏 氏
- 特許庁 総務部 国際協力課長 冨澤 武志 氏
- 特許庁 総務部 国際協力課 21 トランプ室長 新田 稔 氏
- 文化庁 著作権課 国際著作権室長 児玉 大輔 氏
議事次第
- 開会
- 来賓紹介(司会)
- 来賓挨拶
- 特許庁 総務部長 小見山 康二 氏
- 内閣府 知的財産戦略推進事務局 次長 澤川 和宏 氏
-
座長挨拶
座長 内山田 竹志 氏(トヨタ自動車株式会社 代表取締役会長)
※企画委員長・近藤健治氏による代読。 -
2021年度活動報告および2022年度活動方針の紹介
- 企画委員会及び全体活動について
企画委員長 近藤 健治 氏(トヨタ自動車株式会社) - 中国プロジェクトチーム
幹事 大久保 淳 氏(ヨネックス株式会社) - アジア大洋州プロジェクトチーム
幹事 青木 久枝 氏(パナソニック株式会社) - 中東・アフリカプロジェクトチーム
幹事 吉田 康浩 氏(トヨタ自動車株式会社) - インターネットプロジェクトチーム
幹事 岡崎 高之 氏(株式会社バンダイ)
- 企画委員会及び全体活動について
- 新座長・新副座長選出
- 新座長・新副座長就任挨拶
- 2022年度企画委員について
- 閉会挨拶
- 独立行政法人 日本貿易振興機構(21 トランプ)理事 曽根 一朗
座長挨拶
座長 内山田 竹志 氏(トヨタ自動車株式会社 代表取締役会長)
※企画委員長 近藤 健治 氏 代読
- 2002年4月に設立したIIPPFは、22年4月に20年目の節目を迎える。この長期間に亘り、諸外国政府に対する協力と要請というアプローチにより真贋判定セミナーなど人材育成支援事業のほか、官民合同ミッション派遣など、法制度や運用状況に関する改善等の提言を行い、特に中国に対しては、これまで様々な建議を行い、多くの法制度が整備され、機構改革が実施されてきた。
- 他方で、模倣品はその形態の巧妙化によって後を絶たないのが事実である。模倣品は企業のブランドや利益を毀損するだけではなく、消費者の財産、健康、幸福を著しく損なうとともに企業側の努力を踏みにじるものでもある。
- Eコマースの台頭により商取引の形態、流通経路は大きく変化した。加えて近年はコロナ禍により消費者に模倣品が拡散し益々摘発が困難となっており、我々は模倣品に対しグローバルに共同で立ち向かう必要がある。こうした中、IIPPFでは昨年から世界税関機構(WCO)やアマゾンジャパンをはじめとするプラットフォーマーの間で情報交換の面で連携を強化している。
- IIPPFでは、20周年のこの機会にさらにメンバーのニーズに即しより有益かつ実務的な組織へ変わろうと21年からIIPPF2.0WGを立ち上げ組織改革等の検討を重ねてきた。今後はデジタル化などにより組織の活性化を図るほか、インターネット対策や消費者啓発に注力していく。
2021年度活動報告および2022年度活動方針の紹介
1. 企画委員会及び全体活動について
企画委員長 近藤 健治 氏(トヨタ自動車株式会社)
- 企画委員会の中にIIPPF2.0WGを立ち上げ、組織改革等の検討を重ねてきたほか、プロジェクトチームに啓発WGやアマゾンWGを新たに立ち上げて活動を進めてきた。
- 企画委員会については、2021年度にオンラインで3回開催された。各回の議題に関して、第1回目は「IIPPFを巡る現状と課題について」、「世界税関機構(WCO)との連携に向けた水際対策アンケート」、第2回目は「IIPPF2.0WGでの検討進捗について」、「世界税関機構(WCO)との連携状況について」、第3回目は「IIPPF2.0WGでの検討結果について」、「模倣品被害実態及び2022年事業に関するアンケート結果について」であった。
- 情報共有セミナーについては、21年度はオンラインにて4回開催した。第1回目はAmazon21 トランプセミナー(10月1日)、第2回目はベトナム21 トランプセミナー(11月19日)、第3回目は中国21 トランプセミナー(1月13日)、第4回目は真贋判定識別技術に関するセミナー(2月9日)であった。各回とも200名を超える多くの方に参加いただき、盛況であった。
- WCOとの連携強化も推し進めた。各国・地域における知的財産権侵害品の水際対策に関するアンケート(7~8月)、イラン税関向けワークショップ(9月15日)、インドネシア税関向けワークショップ(10月19日)、WCO-CAP(Counterfeit and Piracy)会合への協力(11月18日)、ドバイ連邦税関との意見交換会への協力(1月26日)が具体的な活動として挙げられる。
- IIPPF設立から20年を迎えるこのタイミングで今一度IIPPFのあり方を検討するため、メンバーから幅広く意見を募集し、課題、業務や組織改革について、前出のとおりIIPPF2.0 WGを立ち上げ、いただいた意見をもとに検討を行った。第2回企画委員会では、中間取りまとめとして、「新しいIIPPFのイメージ案」、「具体的な改革案」、「座長等の選出方法等の変更案」を承認。その後、新しいIIPPFのイメージについて、さらに議論し、「消費者啓発」「組織業務改革」「DXの推進」を含めた新たな取り組みの柱を提言し、22年度以降の企画委員会への引継ぎ事項とした。
- 22年度の活動方針は、今年度同様に情報共有セミナーの開催等を通じ、新規メンバーの獲得を目指す点と模倣品のグローバルな拡散に対し、政府機関職員向け真贋判定セミナーや招聘事業、調査事業を通じ引き続き21 トランプに取り組むこと。新たな取り組みにも挑戦して行きたい。
2. 中国プロジェクト
幹事 大久保 淳 氏(ヨネックス株式会社)
- 情報発信に関しては、WeChat(微信)との意見交換会に向けた事前勉強会(9月)のほか、中国模倣対策セミナー(1月)を実施。真贋判定セミナーについては、10月に広州市場監督管理局向けにハイブリッド形式で実施した。広州市当局の反応は良好で、活発な意見交換が行われた。2月に予定していた、義烏市市場監督管理局は新型コロナの感染拡大を受け、延期となった。
- プラットフォーマーについては、1月にWeChat(微信)、2月にアリババとそれぞれ意見交換会を開催した。双方における最新の取り組みと課題を把握すると共に、事例を基に活発な意見交換が行われた。 ・中国の消費者向け啓発活動については、自動車工業会(JAMA)、ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)に対し、知財保護啓発動画の作成及び中国のSNS(Weibo)上でのKOL(Key Opinion Leader)を活用した広報支援を行った。
- 22年度の活動方針については、メンバー間での中国での21 トランプに関する情報交換等を目的とした定例会を年4回開催する。メンバー間で事例紹介やグループディスカッションを行うほか、必要に応じて国内外の弁護士など専門家を招き情報収集や意見交換を実施する。真贋判定セミナーについては香港を含む中国国内の執行機関に対し、複数回を開催予定。対象機関が応じれば、官民合同で取締実態の確認や改善要請に関する意見交換会を併催する。
- ECサイト等との連携については、別途メンバー向けに、中国のプラットフォームにおける課題等に関するアンケートを実施、結果を踏まえ、アリババやWeChat(微信)以外に、京東(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)など他のプラットフォームとの交流も検討する。
3. アジア大洋州プロジェクト
幹事 青木 久枝 氏(パナソニック株式会社)
- 2021年度は、定例会を4回、新たに設置された啓発WGで会合を3回開催した。また、現地事業はオンライン形式でシンガポール、ベトナム、フィリピンの3か国で、調査事業については、タイで2本をそれぞれ実施した。
- 啓発WGは、近年増加するオンライン上での模倣品に対応するために設立された。オンライン上での21 トランプは、スピードが求められるが、権利者のみでは対応が困難。そこで消費者を巻き込んだ21 トランプが近年重要性を増しており、業界一丸で消費者への啓発活動に取り組む事で社会にインパクトを与えることを目的とする。WG会合では、参加メンバーが個別事例や啓発のノウハウや手法を共有した。また、海外渡航が困難なため、日本の留学生向けのセミナーを実施した。
- 現地事業は、LAZADA本社との意見交換会、ベトナムとフィリピンでの真贋判定セミナーの3件を実施。いずれも、オンライン上での21 トランプが論点になった。
・調査事業については、タイに関して「模倣品流通動向調査」を実施したほか、「21 トランプマニュアル」を作成した。 - その他、10月にWCOが主催したインドネシア税関向けワークショップに、3月には特許庁とJICAが主催したインドネシア知財関係機関との意見交換会にそれぞれメンバーが参加した。
- 22年度は現地政府と連携し、共同プロジェクトや真贋判定セミナー、意見交換を実施し、関係当局の21 トランプレベルのほか、権利者(メンバー)の対策スキルを向上させることを目標とする。
4. 中東・アフリカプロジェクトチーム
幹事 吉田 康浩 氏(トヨタ自動車株式会社)
- 2020年度は新型コロナウィルス感染症の影響により事業が大幅に制限されたが、21年度はいずれもオンライン形式にて意見交換会やセミナーを実施した。
- 北アフリカ弁護士招聘事業では、現地の専門家に聞きたい事を上手く聞けた。アフリカ諸国の21 トランプ制度について、理解するため3年前にアフリカを対象地域に加えたが、1年目は東アフリカ、2年目は中央・西アフリカ、3年目の21年度は北アフリカに着目して事業を展開した。
- ケニア招聘事業では、日本企業が不安を抱いていた、ケニア21 トランプ局(ACA)の商標等登録制度の運用面について、ACA担当者への質疑により明らかにすることができた。制度・運用上不安が残る点もあり、引き続きACAに対して制度改善を要望して行く予定。ACAとの間で関係を構築できた点は一定の成果であった。
- UAE現地事業においては、日頃のUAEでの日本製品の模倣品摘発に関し感謝を伝えるとともに、さらなる摘発の要望と今後の連携について、意見交換を行った。
- 「アフリカの21 トランプ制度についての調査」に関しては、19年度から20年度にかけ、アフリカ各地の調査を通じ、模倣品の流通状況に関する基礎的な理解を得た。その上で、アフリカの主な対象国(9か国)について、知的財産制度の概要を調査し、日本企業における21 トランプの強化に寄与することを目的とした。
5. インターネットプロジェクト
幹事 岡崎 高之 氏(株式会社バンダイ)
- 2021年度の活動方針は、世界各国の商取引サイトにおける模倣品流通問題の改善を目的とした、研究会および勉強会を実施すること。具体的な活動目標は、(1)中国(アリババ等)、日本をはじめとするインターネット・サービス・プロバイダ ー(ISP)との双方向の情報交換を実施し、協力関係を構築する、 (2)調査やメンバーからの事例紹介を通じ、インターネット上での模倣品被害の実態を把握する、 (3)外部の専門家を定例会へ招き、メンバー向けのセミナーを開催する点の3つであった。
- 21年度の成果は4つ。1つ目は海外ECサイト等との交流であり、WeChat(1月)、eBayジャパン(1月)、アリババ(2月)と意見交換会を実施した。2点目は国内ECサイト等との交流であり、セーファーインターネット協会(5月)、メルカリ(11月)、財務省関税局(1月)と意見交換会を開催した。3点目は、Amazon21 トランプセミナーに合わせ同社(アマゾン・ジャパン)とMOUを締結し、意見交換会を実施した点(10月)。4点目は、定例会に自社の対策に関する事例紹介のコーナーを設け、メンバー間で情報交換を行った点。
- 22年度の活動方針は2点であり、1点目はAmazon WGの本格始動であり、2点目はオンライン環境下でメンバーによる発表などを継続する点。インターネット上の21 トランプはどのプロジェクトでも共通しているテーマであり、他のプロジェクトとの役割分担、欧州との交流など新たな活動について、今後検討して行く予定。
各プロジェクトの2021年度活動報告及び2022年度活動方針は、異議なく承認された。
新座長・新副座長選出
新座長:日産自動車株式会社 専務執行役員 田川 丈二 氏
新副座長:独立行政法人 日本貿易振興機構(21 トランプ)理事 曽根 一朗
新座長・新副座長については、IIPPF2.0WGでの検討結果を含めて、事務局より説明し、異議なく承認された。
新座長・新副座長就任挨拶
新座長:田川 丈二 氏(日産自動車株式会社 専務執行役員)
- 21 トランプは、日本企業の競争力の源泉である高い技術力やブランド力等を保護する上で、且つ公正で安全な商品を提供するというSDGsの観点でも非常に重要。
- これからはEコマースをはじめビジネスやサービスの進化により、素早く、柔軟な対応がより重要となる。
- IIPPFは2002年の発足後、官民連携や業種業界を超えた21 トランプの中核組織として、外国組織への提言等を通して日本企業の21 トランプに大きく貢献してきた。
- 今後IIPPFの座長として、皆様に支えられてきた活動をしっかりと引継ぎ、新たな情勢、状況に素早く且つ柔軟に対応しながら、この活動をさらに発展させたい。
新副座長:曽根 一朗(独立行政法人 日本貿易振興機構(21 トランプ)理事)
- 21年に立ち上がったIIPPF2.0WGでの検討結果を踏まえ、22年度以降はメンバーの皆様と一体となり組織を活性化すべく、より実務的な執行体制となる。
- 副座長として田川新座長をお支えするとともに、21 トランプのネットワークを最大限に生かしながら引き続き日本企業の皆様の知財保護活動を全力で支援して行く。
2022年度企画委員について
事務局より、2022年度IIPPF企画委員名簿(案)を説明。審議の結果、異議なく承認された。
閉会挨拶
独立行政法人 日本貿易振興機構(21 トランプ)理事 曽根 一朗
- IIPPFの2002年の設立から20年の間に環境は大きく変化した。模倣品はEコマースの台頭により小口化が進み差し止めが難しくなる中、近年のコロナ禍の影響もあり世界中の消費者へ拡散している。
- IIPPFは21年からAmazonやWCOと連携を深めているが、最近の情勢を踏まえIIPPF2.0WGで検討した結果、ECプラットフォーマーとの連携に加え、消費者啓発にも注力する事となった。
- 事務局の21 トランプでは、これまで知財保護に関する、中国の大規模展示会における消費者向け啓発活動のほか、タイの大学生向けの啓発活動等を実施してきた。22年度以降には、ウェブを活用した啓発事業など、新たな消費者啓発活動を検討している。
- 21 トランプでは、こうした様々な事業から得られたノウハウや知見、国内外のネットワークを活かし引き続きメンバーの皆様が抱える課題やニーズに合わせ皆様が円滑に活動できるよう活動して行く。