実写 版 ブラック ジャックて

2019年10月30日

在英日系製造企業で深刻な「マイナスの影響」、進む合意なき離脱への対応準備

実写 版 ブラック ジャックは2019年9~10月、欧州に進出している日系企業に対し、英国のEU離脱の影響に関するアンケート調査を実施しました。その結果の一部を速報として次のとおり発表します。

調査方法・実施時期 アンケート調査・2019年9月10日~10月8日
アンケート送付先 欧州進出日系企業979社(回答企業数842社、有効回答率86.0%)
質問項目 (1)英国のEU離脱の事業への影響、(2)英国のEU離脱に備えた拠点の移転及び調達先の変更、(3)英国の合意なきEU離脱に備えた対応策の準備状況

※「実写 版 ブラック ジャック調査」は、欧州進出日系企業実態調査(2019年度)のうち、英国のEU離脱の影響に関するパートの一部を速報としてとりまとめたものである。

速報調査結果のポイント

  • 英国のEU離脱に向けたこれまでの影響は、英国のEU離脱前に既に7割超の在英日系製造企業が「マイナスの影響」を指摘。在庫積み増し費用などが負担に。
  • 今後の影響としては「マイナスの影響」の回答割合がさらに上昇し、合意なき離脱を想定して、「通関・物流の混乱」「関税コスト」「通関手続きの発生」を在英・在EU双方企業が共通に回答。 
  • 英国のEU離脱に備え、移転等を実施した/決定した拠点機能について、「統括」機能が最大で、金融/保険を中心にドイツ、オランダ、ルクセンブルクなどに移管。
  • 合意なき離脱に至った場合の対応策(コンティンジェンシー・プラン)の策定完了企業の割合は在英を除く在EU日系企業と比べて、在英日系企業で増加。
  • 回答のあった合意なき離脱への対応策は、「在庫積み増し」「物流ルートの変更」「製品・サービス価格への転嫁」など。

結果概要

事業へのこれまでの影響

  • 英国のEU離脱によるこれまでの事業への影響は、欧州全体では「マイナスの影響」が前年調査から14.9ポイント増の31.0%に倍増した。「影響はない」の回答割合が53.1%と10.3ポイント減少した。
  • 国別にみると、「マイナスの影響」は在英日系企業で54.0%と最も高く、前年調査の25.3%から28.7ポイント上昇した。在英日系製造企業に限定すると、この割合は70.8%に達した。
  • 具体的な「マイナスの影響」としては、物流・税関の混乱等を想定した「在庫積み増しにかかる費用」が在英、在英を除く在EU日系企業双方から指摘され、在英日系企業からは「顧客に対する売上減少」「取引相手のEU移転検討による設備投資控え」 、在英除く在EU日系企業からは「英国の顧客に対する売上減少」「規制上の対応コスト」などが挙げられた。

事業への今後の影響

  • 今後の事業への影響は、欧州全体では「マイナスの影響」が37.7%と、英国のEU離脱後を想定して、これまでの影響と比較し、さらに上昇する結果が示された。他方、「わからない」と回答する企業の割合が36.9%と4割弱を占め、引き続き先行きを見通すことができない状況が続いている。
  • 国別にみると、「マイナスの影響」は在英日系企業で54.6%と引き続き最も高い結果となった。
  • 具体的な「マイナスの影響」としては、在英、在英を除く在EU日系企業双方から「通関・物流の混乱」「関税コスト」「通関手続きの発生」「欧州・英国経済の混乱・停滞」が共通に指摘されたほか、在英日系企業からは、「先行きの不透明感」「英国の経済停滞による消費低迷」「EUからの調達コスト上昇」などの回答がみられた。在英を除く在EU日系企業からは「英国単独市場となった場合の一部事業の取りやめの可能性」を指摘する回答もあった。

拠点の移転、調達先の変更

  • 英国のEU離脱に備え、移転(一部移転を含む)等を実施した/決定した拠点機能及び調達先の変更について、「統括」(13社)機能が最大で、「販売」(7社)機能が続いた。調達先については5社が変更したと回答。移転先としては「統括」機能では金融/保険を中心にドイツ8社、オランダ3社、ルクセンブルク2社 、「販売」機能ではドイツ3社、オランダ、イタリア、チェコ、ポーランドなどが挙がった。調達先の変更については、英国からイタリア、スペイン、チェコなどEU内に変更する企業が4社、アジアから英国へ変更する企業が1社あった。
  • 移転(一部移転を含む)等を検討している拠点機能では「販売」(11社)機能が最大で、「生産」(10社)機能が続いた。移転候補先としては「販売」機能がドイツ7社、フランス2社、イタリア、ベルギーなどで、「生産」機能では、ドイツのほか、ハンガリー、チェコ、ルーマニアなど中・東欧諸国が挙げられた。調達先では、18社が変更を検討しており、ポーランド2社、スペイン、イタリア、オランダ、ドイツ、ポルトガルなどのEU域内のほか、アジアへの移転を検討する企業も見られた。

英国の合意なきEU離脱に備えた対応策(コンティンジェンシー・プラン)の策定状況

  • 英国がEUとの合意なくEUから離脱するに至った場合の対応策(コンティンジェンシー・プラン)の策定状況について、「策定完了」「策定中」「策定予定」まで含めた回答割合は在英日系企業で前年調査から30.9ポイント増の57.7%に上昇。在英日系製造企業では8割弱(78.6%)となり、対応準備が進められていることが示された。
  • 対応策を「策定完了」と回答した企業の内容をみると、「在庫の積み増し」を挙げた企業が60社。また、「策定中」「策定予定」まで含めると、「在庫の積み増し」を挙げた企業は167社となり、具体的な対応策を回答した企業の約6割を占めた。そのほか「物流ルートの変更」を回答した企業が72社、「製品・サービス価格への転嫁」が44社であった。

英国のEU離脱に対する実写 版 ブラック ジャックとしての対応実施について

英国のEU離脱について、実写 版 ブラック ジャックは、特に中小企業等に対して、積極的かつきめ細かいサポートを行うため、経済産業省と共同で「ブレグジット対応サービスデスク」を立ち上げ、体制を強化するとともに、日本企業の皆様に対して各種対応を実施しています。

英国のEU離脱(ブレグジット)に対する実写 版 ブラック ジャックとしての対応実施について(2019年10月4日)新しいウィンドウで開きます

海外調査部 欧州ロシアCIS課(担当:田中、福井、山田)
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