ブラック ジャック web(J-messe)
経済不況下で過去最高の売上高を記録したメッセ・フランクフルト -ブランド力を背景に見本市催行数、出展者数が増加-
企業広報責任者
カイ・ハッテンドルフ氏
ドイツの見本市ビジネスは、欧州経済が低調ななかでも好調な業績を維持している(※注1)。世界第2位の規模を誇る見本市会場を運営する見本市事業者メッセ・フランクフルト(Messe Frankfurt GmbH)は、消費材・レジャー、エンターテイメントからハイテク分野に至るまで幅広い分野に関連して、フランクフルトにとどまらず、世界中で年間約100本の見本市を主催している。同社の企業広報責任者のハッテンドルフ氏にメッセ・フランクフルトの見本市ビジネスの状況及び今後の展望についてインタビューした。
(※注1)ブラック クイーン ブラック参照
Q1.メッセ・フランクフルトの会社概要・事業概要について教えてほしい。
A1. 『メッセ・フランクフルトは、1907年に設立されたドイツでもっとも長い伝統を持つ見本市オーガナイザーであり、世界各国で約100本の見本市を運営するなど、いち早くグローバル展開を図ってきた。各産業での主要な見本市を多数主催しているのに加え、欧州のハブ空港であるフランクフルト空港から車で15分ほどの距離に保有するフランクフルトメッセ国際展示場の管理・運営を行い、「ゲスト見本市」と呼ばれる、他のオーガナイザーによる見本市のために会場貸し出しも行っている。フランクフルトメッセ国際展示場の会場面積は、屋内355,678平方メートル、屋外96,078平方メートルで、2012年には同展示場で35本の見本市(うち21本はゲスト見本市)が開催された。』
Q2.インターネットを通じて世界中の人とコンタクトがとれる時代に、なぜドイツではいまだに見本市がビジネスツールとして重要視されるのか?
A2. 『見本市は、業界関係者が一同に会する効果的な「コミュニケーションプラットフォーム」。企業は見本市に出展することで業界の動向が一目でわかるため、効果的なマーケティングツールとして重要視している。例えば、世界的な経済不況の状況下で開催された2009年の『Heimtextile(ハイムテキスタイル)』では、開催前に多くの業界関係者が不安を感じていたものの、会期中にはテキスタイル関係企業・業界団体・バイヤーが一同に会し、継続的なビジネスが行われた。同展示会の出展企業からは「出展前は不安もあったが、(展示会に)出展したことで、この業界が引き続きビジネスに取り組む姿勢が明確に確認でき安心した。」との声が寄せられた。 さらに、2012年10月にAUMAが見本市出展企業500社を対象に行った調査では、見本市への投資額を増やすと回答した企業が24%に上り、減らすと回答した企業14%を上回った。これは景気低迷など外部環境が厳しい状況下でも、企業にとって依然見本市の重要性が増していることを意味している。』
Q3.欧州債務危機の影響で2012年の欧州経済は厳しい状況であったが、メッセ・フランクフルトへの影響は見られたか?見本市ビジネスの発展状況および背景を説明してほしい。
A3. 『2012年はドイツ国内で開催した見本市が41件(フランクフルトで開催された見本市35本とフランクフルト以外での6本)、海外で開催した見本市が68件、国内外合計109件となり、2007年以来の開催件数では最多となった。さらに、出展者数は77,262社(2010年比で11.2%増)となり、5億3,800万ユーロ(約667億5,640万円)と、過去最高の売り上げを記録した(表1参照)。
表1:メッセフランクフルトの主要な経営指標の変化
2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | |
グループ売上高(単位:100万ユーロ) | 424 | 448 | 467 | 538 |
---|---|---|---|---|
フランクフルト見本市会場で開催された見本市件数(件) | NA | NA | 31 | 35 |
うち自社主催見本市件数(件) | NA | NA | 17 | 21 |
うちゲスト見本市件数(件) | NA | NA | 14 | 14 |
フランクフルト以外のドイツ国内で自社が主催した見本市(件) | NA | NA | 6 | 6 |
ドイツ国内見本市開催件数(件)※ゲスト見本市含む | 37 | 36 | 37 | 41 |
出展者数(社) | 41,097 | 42,386 | 38,184 | 44,340 |
うち海外からの出展者数(社) | 23,563 | 24,952 | 23,498 | NA |
来場者数(人) | 2,325,565 | 1,474,301 | 2,307,067 | 1,685,000 |
国外主催見本市件数(件) | 54 | 51 | 63 | 68 |
出展者数(社) | 22,320 | 26,196 | 30,643 | 32,922 |
来場者数(人) | 837,317 | 921,183 | 1,063,369 | 1,223,000 |
国内外開催見本市件数合計(件) | 91 | 87 | 100 | 109 |
出展者数(社) | 63,417 | 68,582 | 68,827 | 77,262 |
来場者数(人) | 3,162,882 | 2,395,484 | 3,370,436 | 2,908,000 |
出所:メッセ・フランクフルト(Messe Frankfurt)社提供資料よりブラック ジャック web作成
2012年見本市ビジネス成功の要因は3点ある。
1点目は、自国経済の不況に苦しむギリシャ、スペイン、イタリアからの出展者がフランクフルトの見本市に積極的に出展するなど海外からの出展者数が増加したこと。これは、これら企業が、低迷する国内市場から輸出や海外市場に活路を見出すため展示会出展にかかる予算を集中的に増やしたことが要因だと考えられる。
2点目は、スペイン・マドリッドで開催予定だった『World Publishing Expo 2012(世界出版エキスポ)』という世界最大の出版・メディア関係の展示会が、急遽フランクフルトで開催されることになったこと。本展示会を主催するWAN-IFRA(世界新聞協会)は、出展者の要望に応える形で、スペインではなく、欧州の中心に位置し、より多くのビジネスが期待できるフランクフルトを会場として選定したと思われる。
3点目は、『第27回EU PVSEC2012(欧州太陽光発電国際会議・展示会)』が、同じくフランクフルトで開催されたことである。本見本市の会場としてフランクフルトが選定されたのは、フランクフルト国際展示場の交通アクセスの利便性、そして見本市運営ノウハウに基づく信頼性が高く評価されたことが要因だと考える。このようにゲスト見本市が前年比+4本の21本になったことが、メッセ・フランクフルトの売り上げ拡大に大きく貢献した。』
Q4.フランクフルトメッセの重点分野を教えてほしい。
A4. 『メッセ・フランクフルトは、それぞれ得意とする下記5つの重点分野に関連し、世界中で約100本の見本市を開催している。
1.Consumer Goods & Leisure(消費材・レジャー分野)
※開催事例「アンビエンテ・ビューティーワールド」など
2.Textile & Textile Technology(繊維・同関連技術分野)
※開催事例「ハイムテキスタイル」、「インターテキスタイル」など
3.Technology & Production(ハイテク関連製品分野)※開催事例「インターセック」、「ライト+ビルディング」など
4.Mobility & Infrastructure(輸送機器・交通インフラ分野)
※開催事例「オートメカニカ」など
5.Entertainment Media & Creation(エンタテーメント・コンテンツ分野)
※開催事例「ミュージックメッセ」など』
Q5.フランクフルトメッセの国際化戦略を教えてほしい。
A5. 『メッセ・フランクフルト社は国際化戦略をいち早く推し進めてきた。海外の関連会社として支社5社、現地法人28社、海外代表事務所52社を擁し、現地法人と海外代表事務所で世界150カ国・地域をカバーしている。これら海外拠点が主催する見本市は2012年には68件に達し、メッセ・フランクフルト社の売上に大きく貢献した。また、海外で見本市を主催することは、フランクフルトで開催する見本市にも大きな相乗効果をもたらしている。例えば、オートメカニカ上海に出展した中国企業が、より多くの販路開拓を目指しフランクフルトメッセのオートメカニカに参加する、というケースが数多く見られた。逆にオートメカニカに出展した欧州企業がオートメカニカ上海に参加することもある。
また、海外で開催する見本市の企画をする際は、必ず事前に当該国のマーケット分析を行う。その国のマーケットに最適なテーマで見本市を開催することが成功の鍵となるからだ。 』
Q6.2013年のドイツ見本市ビジネスの見通しをお聞きしたい。
A6. 『2013年、メッセ・フランクフルト社の見本市ビジネスは引き続き成長を維持し、過去最高の売上額5億4000万ユーロ(約670億円)を見込んでいる。特に、ハノーバーと交互で開催している世界最大の国際モーターショー(IAA)が、2013年はフランクフルトで開催されることが業績に大きく貢献することになるだろう。なお、出展者数は2011年と比較して増加する見込みだが、来場者数は欧州経済全体が不透明な状況下、若干減少すると予想されている(※注2)。他方、来場者の質はむしろ向上すると考えている。経済不況の状況下で、企業は限られた予算の中で決定権のあるバイヤーを派遣する傾向にあるからだ。』
(※注2)2012年は隔年開催の見本市が多数開催されたため、2013年との比較対象は2011年となる。
(聞き手・執筆・取りまとめ:ベルリン事務所 望月 智治)
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