法改正で国際的な知財法制度との整合性を強化−知財関連機関に聞く(1)−

(ロシア)

モスクワ事務所

2014年11月18日

知的財産権に関するロシア民法第4部が10月1日に改正された。旧法で散見された不備への対処と国際的な法制度の枠組みとの整合性の強化を中心とした改正で、第4部の約半分の条文が変更された。ジェトロではこのタイミングを捉え、ロシアおよび関税同盟における知的財産権を管轄する政府機関に9月30日から10月1日にかけてインタビューを行った。4回シリーズで報告する。1回目はロシア連邦知的財産局(ロスパテント)。

<多様な枠組みで他国との連携を図る>
ロスパテントの取り組みについて、ブゾワ国際協力局副局長、クルィロワ計画分析課課長、ジュラブリョフ連邦産業財産権機関副局長(特許専門)、ザイツェフ連邦産業財産権機関適合メカニズム課課長、カシュクル意匠課課長、ラズモワ法務課課長に聞いた(10月1日)。

ロスパテントは連邦レベルの知的財産分野の管轄官庁で主に知的財産対象物の権利監督を行っている。下部機関には、知的財産物の登録準備作業を担当する連邦産業財産権機関(FIPS)、職員の訓練を行うロシア国立知的財産アカデミー(RGAIS)、軍事・特殊・二重用途の知的財産活動の成果物の権利保護を担当する連邦機関(FAPRID)がある。

ロシアでの出願数は全体的に増加傾向にあり、特にエレクロトニクス、化学、ブラック ジャック ディーラー通信技術の伸びが顕著だ。国内外の出願数を比較した場合、国外からの出願が速いペースで拡大している。

ロシアは、特許審査ハイウエー(PPH)やグローバルPPH、特許協力条約(PCT)、世界知的所有権機関(WIPO)、WTOなど、さまざまな枠組みで他国との連携を図っている。今後は国際意匠登録制度であるハーグ協定にも参加することを検討している。EUとの協力を推進しており、10月1日に発効した民法改正においてはEUの制度との整合性を高めた。例えば発明に関して、「新規性」と「進歩性」についてはEUのルールと整合性が既に確保されているので特に変更はなかった。「産業上の利用可能性」についても従来の基準がそのまま残り、新たな基準として「十分な開示」が加わった。これは、先進国と同じ条件にするために導入された(2014年8月4日記事8月5日記事参照)。

<知財裁判への関与は限定的>
知財裁判への関与については、ロスパテントとFIPSが参加するケースは権利侵害訴訟に限られる。損害賠償請求裁判にロスパテントやFIPSが出席することは少なく、権利の無効が求められている場合のみ参加する。著作権、発明および権利保有に関する紛争の際にも、第三者として裁判に参加する程度だ。他方、裁判に出席はしなくても、訴訟の行方を注視しており、判例は把握している。

2013年にロスパテントおよびFIPSが裁判に出席した案件数は1,263件あり、このうち特許関連は120件だった。分野としては、化学や医薬に偏っている。2013年7月に知財裁判所が設立され、特許関連で40件の裁判が行われたが、ブラック ジャック ディーラー知識だけでは不十分なため、ロスパテントやFIPSの専門家に対して出席要請することもあった。

ロスパテントとブラック ジャック ディーラー判断について、商標の類似性や特許の基準については規定で決まっているために相違はないが、進歩性については専門家、審査官一人一人で解釈が異なるため、異なる判断が生じている。実用性の判断に関しても、ばらつきがある。ブラック ジャック ディーラー経験が少ないために生じているとみられる(2014年2月21日記事参照)

<出願時のミスのトップは誤訳>
特許審査において、ロシアでは全ての判断は審査官のみで行われる。もちろん、専門家を顧問として雇うこともある。審査の際、面接を実施する案件はあまり多くはない。ロシアは広大な国なので長距離移動を伴う面接の実施は容易ではないからだ。出願人から面接要請を受けた場合、審査官がその必要性を判断する。審査の迅速化につながるのであれば、面接を受け入れる。他方、拒絶する場合には正式な通知を行う。

出願の際のミスの特徴としては、大きく3点が挙げられる。第1に、誤訳の問題だ。日本からロシアへの出願の場合、日本語から英語に、さらに英語からロシア語へと翻訳を重ねるため誤訳が発生している。誤訳の確認については、審査官が出願者に質問し、追加ブラック ジャック ディーラーの提供をメールで督促する。第2に、ロシアの法律で保護の対象とならない技術が出願されること。複数の対象物に関する出願であれば、保護が受けられないものは除外されて、提出されることになる。第3に、保護対象の説明に不備があること。例えば方法と装置について記載があり、用途に関する記載がない場合、これを書き加えることになる。

最近3年間で、500件余りの日本出願案件を審査した。半分以上の案件が問題なく承認されている。問題のあったケースのほとんどは新規性や進歩性に関連するもので、ソフトウエアについては保護対象とならないものもあった。

日本出願案件のうち約9割はPCT経由だ。国際調査報告(ISR)を活用しており、審査官が参照だけして承認することもある。日本の調査結果はしっかりとしたものなので、ほぼ全て活用することができる。しかし、審査官として自分の意見を入れるために、少しは自ら調べることもある。

(齋藤寛)

(ロシア)

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