外資サブリース規制緩和に日系企業の期待感高まる−不動産事業法を抜本改正へ−
ホーチミン事務所
2014年08月21日
停滞する不動産市場を活性化するため、約8年ぶりに不動産事業法が全面改正される見込みだ。改正案では、外資サブリース規制が大幅緩和され、大型商業施設の「所有」と「経営」が分離可能となり、ビジネスへの自由度が高まることへの外国企業の期待は大きい。ただ、草案の内容は2014年秋の国会最終審議で大きく変わる可能性もあり、今後の行方が注目される。
<2014年末の国会で議決の予定>
外国企業がベトナムで商業施設を運営する上での基本的な法的枠組みは、不動産事業法(No.63/2006/QH11、2006年6月29日公布)に準じている。政府は、停滞する不動産市場の活性化と魅力ある商業施設の展開を目的に、基本法令の全面改正に動き出している。2015年7月1日施行に向けて、既に2014年5月に草案が国会に上程されており、2014年末の国会で議決が予定されている。
外資の事業内容に関する改正案のポイントは以下のとおり。
(1)現行法(外資が可能な不動産事業)
○販売または賃貸のための建物の建設投資(注1)
○インフラ付きで土地を賃貸するための土地の造成(工業団地など)
○不動産仲介、鑑定、コンサルティングなどの不動産サービス業
(2)改正案(新たに追加される不動産事業)
○転貸のための建物の賃借
○オフィスについては、建造済みの建物を購入または賃借して賃貸可能
<日系商業デベロッパーに大きなメリット>
日本やシンガポールなどでは、魅力ある商業施設づくりに強みを持つ企業(商業デべロッパー)が建物を借り、独自のコンセプトを持って商業施設を展開するビジネスモデルが一般的だ。今回のサブリース規制緩和により、建物の「所有」と「経営」が分離可能となり、ノウハウを蓄積した日系商業デベロッパーがより少ない投資コストで多店舗展開できるメリットは大きく、不動産価値の最大活用とベトナム小売事業分野の近代化が大いに期待できる。今後、日系商業デベロッパーの新規進出が増えるとともに、出店する日系小売りテナントの進出が増えることは確実だ。
なお、今回の外資サブリース規制緩和に当たり、日越共同イニシアチブ第5フェーズにおいてWT7(小売り・流通・不動産)が日越間で議論の末に共通理解を得たことが大きく寄与しているといえる。本件に関する2014年7月の日本側中間進捗評価(注2)は、「◎」(実施済み)となっている。
(注1)建造済みの建物については、購入して賃貸しすることはできないものの、建物を所有する企業を買収すれば賃貸しは可能。
(注2)◎(実施済み)、○(予定どおり)、△(遅延)、×(実施せず)の4段階評価。2014年12月に最終評価。
(栗原善孝)
(ベトナム)
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