付加価値税率を1ポイント引き上げ−高所得者への7%連帯賦課税も導入−

(チェコ)

プラハ事務所

2013年01月16日

2013年1月1日から付加価値税(VAT)率が標準税率、軽減税率ともに1ポイント引き上げられ、それぞれ21%、15%となった。また、高所得者を対象に7%の連帯賦課税が導入された。

<標準、軽減税率ともに引き上げ>
今回のVAT率引き上げは、クラウス大統領が2012年12月21日に署名した「国家予算赤字削減に関連する税制、保険その他の変更に関する法律」に基づくもの。同法は、財政赤字削減と政府債務削減を目的としている。2012年5月の閣議決定後、上院で否決され、下院差し戻しにおいても否決されたため、9月に再度提出された。この際も上院が否決し、下院への差し戻し・再可決の手続きを踏む必要があったため、年末ぎりぎりまで2013年のVAT率が不明な状況となり、企業の財務・事業計画に多大な支障が出た。最終的には2012年12月19日の下院再可決の3日後という異例の速さで大統領が署名したため、これ以上の混乱は回避された。

同法による主な改定点は以下のとおり。

(1)VAT率引き上げ
2013年1月1日から、VAT率が標準税率、軽減税率ともにそれぞれ1ポイントずつ引き上げられ、21%、15%となった。

なお、今回の改定前のVAT法においては、2013年から標準税率と軽減税率を17.5%に一律化することが定められていたが、今回の改定により一律化は2016年1月に延期された。

(2)連帯賦課税の導入(2013〜2015年のみ)
年額で、全給与所得者のグロス給与の月額平均値(対象年の2年前の平均賃金を基に前年上半期の平均賃金上昇率を考慮し算出)の48倍を超える所得〔現状では約120万コルナ(1コルナ=約4.6円)〕については、超過分に対して7%の連帯賦課税が新たに課税された。
算出方法は以下のとおり:
{(年間所得額から所得税控除額を差し引いた額)−(月額平均賃金×48)}×7%

(3)健康保険料上限の撤廃(2013〜2015年のみ)
健康保険料に関しては、平均賃金の6倍(2012年180万9,864コルナ)に対する保険料が限度額とされていたが、これを撤廃した。2013〜2015年については所得額に応じて、上限なく保険料が設定される。

(4)その他
○所得税納税者が年金受給者である場合の月額2,070コルナの控除額適用を撤廃(2013〜2015年のみ)
○不動産売買に関わる税額の引き上げ

政府は、これらの税制改革により、2013年に約219億コルナの税収増を見込んでいる。

<産業団体はVAT率引き上げを批判>
「国家予算赤字削減に関連する税制、保険その他の変更に関する法律」は、増税を定めている点において、野党のみならず、右派中道連立与党内からも批判が上がっていた。特にVAT軽減税率引き上げに関しては、国内産業団体もその影響を憂慮している。チェコ経済会議所のクジェル会頭は「VAT軽減税率引き上げは、国民の通常の消費に直結する商品の価格高騰を意味し、大半の家計に悪影響を及ぼすものだ」と述べ、さらにはより安価な食品などを求める外国への「越境ショッピング」増大による悪影響を危惧した。

これに対して、カロウセク財務相は「VAT軽減税率が10%から14%に大きく引き上げられた2012年も、軽減税率適用商品の売上高は前年から変化していない」と指摘した。また、2012年のVAT税収も前年比4%増大している点に注意を喚起し、VAT率引き上げの経済効果を疑問視する声に反論している。

(中川圭子)

(チェコ)

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