21 トランプ、まず3ヵ国先行で発効
欧州ロシアCIS課
2012年10月09日
21 トランプ(FTA)が9月20日、発効した。既に批准を済ませているロシア、ベラルーシ、ウクライナの3ヵ国のみが対象だが、10月17日にはアルメニアも加わる見込み。9月28日に開催されたCIS首相会合では、ウズベキスタンが2012年末までにFTAに署名することが承認された。
<当初はロシア、ベラルーシ、ウクライナが対象>
CIS自由貿易圏創設の構想はソ連崩壊直後からあった。旧ソ連構成国のうち、バルト3国を除いた独立国家共同体(CIS)が1991年に結成され、その枠組みの中で94年4月に、トルクメニスタンを除く、ロシア、アゼルバイジャン、アルメニア、ベラルーシ、グルジア、カザフスタン、キルギス、モルドバ、タジキスタン、ウズベキスタン、ウクライナの11ヵ国が自由貿易圏の創設に関する協定を締結した(注)。
その後、2003〜05年にグルジア、ウクライナ、キルギスで起こった「色の革命」をきっかけに、各国の対ロ関係が変化した。トルクメニスタンが2005年に準加盟国になることを宣言したことから、CIS首脳会議に全ての国が参集しなかったり、2008年8月に勃発したロシアとグルジア間の紛争を契機に、グルジアが2009年8月にCISを脱退したり、と足並みが乱れた。
2011年10月になり、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス、モルドバ、タジキスタンによってCIS自由貿易圏に関する協定の署名にこぎ着け、CIS圏内のFTA発足に道が開けた。
そして、2012年の4月にロシア、5月にベラルーシ、8月にウクライナがそれぞれ国内で協定の批准手続きが完了。協定に基づき、先行批准した3ヵ国だけで9月20日に協定が発効した。アルメニア、モルドバでも9月に議会で批准が承認された。CIS執行委員会ウェブサイトによると、アルメニアは10月17日に自由貿易圏に加盟する見込みになっている。モルドバの加盟日は未定。また、カザフスタンも9月26日に下院で批准が承認された。
<アルメニア、ウズベキスタンも参加へ>
9月28日にウクライナのヤルタで開催されたCIS首相会合で、CIS自由貿易圏についての議論が行われた。ホスト国であるウクライナのミコラ・アザロフ首相は、首相会合後の記者会見で、2012年末までに全ての協定署名国の批准が完了するとの見通しを明らかにした。
ウズベキスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタンの3ヵ国はこれまで、自由貿易圏に関する協定の署名を見合わせてきた。このため、プーチン・ロシア大統領が2012年6月にウズベキスタンを訪れて、カリモフ大統領と会談し、ロシアが同国の加盟を後押しすることで合意した。今回のCIS首相会合では、ウズベキスタンのFTA署名手続きを12年末までに完了することが承認された。
<食品など一部例外品目を設定>
今回のFTAによると、原則として協定加盟国間では、a.輸出入に際し関税を適用しない、b.輸出入の数量規制を設けない、c.内国民待遇を適用する、となっているが、国ごとに一部例外が設けられている。
例えば、ウクライナ産の精製糖に対しては、ベラルーシ、カザフスタン、ロシアが1トン当たり340ドルの輸入関税を課す。国および原産国によって、糖類、てん菜の種、たばこ、ウォッカ、エチルアルコールが例外品目として輸入関税が課される。輸出関税、数量規制、内国民待遇についても例外規定が設けられている。原産国の決定は、2009年11月に成立した「CISにおける原産国の決定規則に関する協定」に基づくとされている。
(注)並行して、1992年から2006年にかけてCIS諸国内の2国間でFTAが締結され、発効している。
(浅元薫哉)
(CIS・ロシア・ベラルーシ・ウクライナ)
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