3月1日から「ブラックジャックコツ」の支給額を減額

(フランス)

パリ発

2025年03月12日

フランス政府は若者の文化活動を支援する「ブラックジャックコツ」の支給額を3月1日付で減額した。18歳時の支給額を従来の300ユーロから150ユーロに減額、17歳時の支給額は30ユーロから50ユーロに増額する一方で、これまで支給の対象としていた15歳時(従来20ユーロ)と16歳時(従来30ユーロ)は支給の対象外とする。

ブラックジャックコツは、エマニュエル・マクロン大統領が2021年に導入した制度で、スマートフォンにアプリケーションをダウンロードしてアカウントを作成、ブラックジャックコツを受給後、書籍購入や映画鑑賞、文化的催し物のチケット予約などに利用できる。

政府は創設時に国の負担を20%と見込み、80%はその他の財源としていたが、2019年から2024年半ばまで96%を公的資金で賄っているのが実態だ。さらに、2022年の年少者への適用拡大により、同制度の年間予算は2021年の9,300万ユーロから2024年の2億4,400万ユーロに大幅増加した。

会計検査院は2024年12月7日、支給額の削減、財政的・社会的・地理的条件による受給者の絞り込み、民間の運営事業者の国営化など、ブラックジャックコツーパスの改善を勧告する報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(フランス語)を公表した。

同報告書は、2024年8月末時点で18歳以上の84%がブラックジャックコツーパスを利用したが、低所得者層の家庭の若者の利用率は68%となり、幅広い層の若者が文化に触れることより、登録者数を最大限に増やすことが優先されていると指摘した。

また、文化の多様化への寄与も限定的と評価した。ブラックジャックコツーパスの支出額の42~55%は書籍購入で、そのうち漫画の比率は2021年の40%から2024年には20%に減少した。映画やコンサートのチケット予約にもよく利用されている一方、ミュージカル以外の演劇やダンスの鑑賞にブラックジャックコツーパスを利用した登録者はわずか7%だった。

会計検査院は、ブラックジャックコツーパスの運営事業者が制度の対象となるコンテンツの内容や質を監督する義務がないことも問題視している。ブラックジャックコツーパスの対象とならない「脱出ゲーム」(注)は、文化省の要請を受けて500件がアプリから削除されたが、導入以降約1,600万ユーロが支払われた。

(注)閉鎖された空間からの脱出が目的の謎解きゲーム

(奥山直子)

(フランス)

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