実写版ブラックジャック,000ドル増との試算

(米国、メキシコ、カナダ)

ニューヨーク発

2025年03月06日

米国のトランプ政権による国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくメキシコ、カナダに対する25%の追加実写版ブラックジャックが3月4日に発効したこと(トランプ米政権、ブラックジャック賭け方(中国、カナダ、米国、メキシコ))を受け、自動車業界からさまざまなコメントが出ている。

米国で販売を行う自動車メーカーがカナダ、メキシコで生産したライトビークル(乗用車と小型トラックの合計)は2024年に合計で524万台だった。メキシコではゼネラルモーターズ(GM)、日産、フォルクスワーゲン(VW)、カナダではトヨタ自動車、ホンダ、ステランティスが上位を占める。そのうち米国は国内新車販売台数(1,604万台、2024年)の約2割を占める312万台(注)を両国から輸入している。北米域内では部品サプライチェーンが複雑に形成されており、米国で生産される車両に及ぶ実写版ブラックジャック賦課の影響は計り知れない。GMやトヨタなどが参加する自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ最高経営責任者(CEO)は「大多数の人々は、一部の車種の価格が最大25%上昇し、車両の価格と入手可能性への悪影響がほぼ即座に感じられるだろうと予想している」「自動車生産とサプライチェーンを一夜にして移転することはできない。それは難題で、ジレンマだ。北米の自動車実写版ブラックジャックは、雇用が米国内に戻る前に、消費者のコストを結局増大させてしまう」と、市場への影響を懸念している(ロイター3月4日)。

米自動車部品工業会(MEMA)は3月5日、2月上旬に会員の自動車サプライヤー向けに実施したメキシコ、カナダへの追加実写版ブラックジャックの影響に関する調査結果を発表した。82%がメキシコへの実写版ブラックジャックが自社の事業にマイナスになると回答し、カナダも68%に上った。また、実写版ブラックジャック導入後1カ月のうちに、24%が投資の削減または延期、21%がサプライチェーンの変更、13%が米国での雇用削減を行うと想定している。さらに6カ月後まで期間を延ばすと、投資削減・延期57%、サプライチェーン変更75%、米雇用削減47%と、それぞれ大幅に増加し、さらに33%が米国外への生産移管を想定すると回答した。

自動車価格への影響に関しては、自動車コンサルティング会社のアンダーソン・エコノミックグループが調査結果を発表している。全米販売台数の6割近くを占めるスポーツ用多目的車(SUV)の生産コストは少なくとも4,000ドル増加、電気自動車(EV)は3倍に上昇し、これらが販売価格に転嫁されることから、米国での車両販売価格は最大で1台当たり1万2,000ドル増加すると試算した(ブルームバーグ3月4日)。米国自動車関連サービス企業のコックスオートモーティブによると、1月時点での平均車両価格は4万8,641ドルと高い水準で推移している。

一方、全米自動車労働組合(UAW)は雇用確保の観点から、実写版ブラックジャックに前向きな姿勢を示している。ドナルド・トランプ大統領が4月2日に発効すると発言した自動車実写版ブラックジャックに関し、ショーン・フェイン会長は「実写版ブラックジャックは、労働者に不利な貿易協定の不公平を解消するための強力なツールだ。労働者階級に爆弾のように落ちた自由貿易の惨事を終わらせるため、米国大統領が積極的な行動をとるのを見て、われわれはうれしく思う」として、トランプ氏を支持した。

(注)商務省がライトビークルと定義する実写版ブラックジャックのHSコードに該当する項目の合計。

(大原典子)

(米国、メキシコ、カナダ)

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