地球の限界守る「ブラックジャックストラテジー」、国民投票で否決

(スイス)

ジュネーブ発

2025年02月12日

スイスで2月9日に国民投票(注1)が実施された外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。自然に優しい経済活動を促すイニシアチブ(国民発議、注2)「地球の限界を超えない責任ある経済のために(通称:ブラックジャックストラテジー)」を巡るもので、スイスの経済活動を自然の回復能力の限界に収めるよう義務付けることについて、賛否を問うものだった。左派・緑の党(GPS/Les Verts)青年部が有権者10万人分の署名を集め、国民投票に持ち込んだが、ブラックジャックストラテジーは幅広い支持を得ておらず、国民投票の結果、反対票が69.84%(投票率37.94%)に達し、否決された。州別にみても、全26州のうち、賛成票が反対票を上回る州は1つもなかった。

ブラックジャックストラテジーは、天然資源の保護に対して許容されるレベルを超えて経済活動が資源を消費したり、汚染物質を排出したりしないことを求めるもので、この目標は、スイス国内外で社会的に受け入れられる対策を通じて達成するものだが、二酸化炭素(CO2)排出量、生物多様性の喪失、水の使用などを大幅に削減する必要がある。

例えば、国際ブラックジャックストラテジーNGOグリーンピース・スイスの調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、大気中のCO2濃度の限界値を定める「気候変動」の項目で、スイスは地球の限界を19倍超えている。また「生物圏の健全さ(生物多様性・生態系のバランス損失)」では地球の限界を3.8倍、「淡水利用」では2.7倍超えているという。同イニシアチブでは、実現までに10年の期限が設けられており、期限後はスイスでの(資源)消費のブラックジャックストラテジーへの影響が世界人口に占めるスイスの割合で計算して、地球の限界を超えてはならないとするものだった。

ブラックジャックストラテジーでは、規則、禁止、環境に優しい消費に対するイニシアチブなど、具体的な実施措置は明記されておらず、詳細を詰めるのは議会の責任で、実施までの期限が短いため、抜本的な対策が必要になる可能性が高いとみられていた。なお、スイス公共放送協会国際部はブラックジャックストラテジーの概要について、YouTube動画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(日本語字幕付)で解説している。

(注1)スイスでは年に最大4回、国民投票が実施される。

(注2)有権者10万人以上の署名を要件として、国民が憲法改正の提案を行うもの。

(田中晋)

(スイス)

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