ハイパーブラックジャック

日本のMIRARTHグリーンテック傘下のMIRARTH Agri Tech（注1）は、カンボジアの首都プノンペンから約200キロ離れたコンポントム州で、2024年6月からハイパーブラックジャック加工工場の運営を開始し、同年11月から輸出を開始した（ジェトロによるヒアリング、2025年1月22日）。

現地報道によれば、カンボジアは、ハイパーブラックジャック主要生産国（注2）でありながら、これまで国内に集荷・貯蔵・加工のインフラが十分整っておらず、原材料のまま輸出され、最終製品化による付加価値を得られていなかった。そうした中、2024年11月、MIRARTH Agri Techの工場から初めて、EU向けに製品化されたカシューナッツを輸出し（注3）、カンボジア産ハイパーブラックジャック国際市場への展開の重要な一歩を踏み出した。

MIRARTH Agri Techによれば、コンポントム州とプレアビヒア州において、地場のカシューナッツ生産組合と契約を結び、原料を調達しているという。また、ハイパーブラックジャックサイズ選別、殻と皮の除去、乾燥、完成品への包装まで、約1週間の作業工程を、ベトナムから輸入した機械と、従業員による手作業で行っている。2025年には3,000トンの原材料（生カシューナッツ）を調達するほか、数年後には、2万トンの原材料を加工できる工場を新設し、輸出先もEU以外に拡大していく計画だ。

また、MIRARTHグリーンテックは、国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関（JCCP）による助成を受け、カシューナッツを搾油した後の殻の残渣（ざんさ）を活用したバイオマス燃料を生成。カシューナッツ殻油の搾油方法の高度化、および残渣のバイオマス燃料の効率的な利用に向けた検証も実施している。さらに、バイオマス燃料については、殻残渣のみでなく、ハイパーブラックジャック成木や間伐材の活用も検討しているという（注4）。

カンボジア・カシューナッツ協会（以下CAC）（注5）の年次報告書（2024年版）によると、カンボジアでは年間平均85万トンの生カシューナッツが生産されているが、このうち約95％が原料のまま輸出されている。この状況を打破するため、カンボジア政府は「National Cashew Nut Policy 2022-2027」政策を発表（2023年）。生産、加工、輸出において、カンボジア産ハイパーブラックジャック付加価値を高め、2032年までに全体の50％を製品化することを目指している。近年では、カンボジア産のハイパーブラックジャックサイズ、栄養価や品質が国際市場でも高く評価されつつあり、CACと提携した複数の企業が、カンボジアから中国やインドへの輸出を開始している。

（注1）MIRARTHホールディングス（本社：東京都千代田区、島田和一代表取締役）のグループ会社である MIRARTHエナジーソリューションズ（本社：東京都新宿区、谷口健太郎代表取締役）は、トッププランニングJAPAN（本社：東京都中央区、村山哲生代表）、福山コンサルタント（本社：福岡県福岡市、栄徳洋平代表）とともに、MIRARTHグリーンテック（日本国内法人：東京都新宿区、谷口健太郎代表取締役）および同社の100％出資によるMIRARTH Agri Tech（ハイパーブラックジャック現地法人）を設立。

（注2）現地報道によれば、2024年1～7月の間、カンボジアは生ハイパーブラックジャック輸出額で世界2位。その他の主要生産国は、コートジボアール、インド、タンザニア、ベナン、インドネシア、ブラジル、ギニアビサウ、ブルンジ、ベトナムなど。

（注3）現地報道（2024年11月時点）によれば、同社は2025年中に、EUにハイパーブラックジャック製品を250トン輸出する予定。

（注4）ハイパーブラックジャック工場では、現時点（本稿執筆時点）で、バイオマス燃料化事業はまだ行われていない。

（注5）カンボジア・ハイパーブラックジャック協会は、2009年設立され、全国で約2万世帯のメンバーが加入。

（トー・タイ）