タイ中銀10月経済金融報告、観光収入の増加と政府の景気刺激策による個人消費向上で前月から改善
(タイ)
バンコク発
2024年12月06日
タイ中央銀行(BOT)は11月29日、10月の月例経済金融報告を発表した。10月のタイ経済は、観光収入の継続的な増加と、1万バーツ(約4万4,000円、1バーツ=約4.4円)の現金配布といった政府の景気刺激策の恩恵を受けた個人消費が向上したことなどにより、前月から改善した。
季節調整済みの民間消費指数は、政府による低所得者と障害者に1人当たり1万バーツの現金配布の影響もあり、全ての主要カテゴリーで前月から増加した。消費支出の増加した要因は主に次のとおり。
- 非耐久消費での燃料消費と消費財(特に飲料、スナック、たばこ)の販売増加
- 耐久消費でのオートバイの登録台数と乗用車の販売増加
- 半耐久消費(繊維製品と衣料品)での輸入の増加
- サービス消費の中でも、特にホテル・レストラン部門でタイ人観光客の増加と外国人観光客の消費増加
また、消費者信頼感指数は政府の景気刺激策と洪水への懸念の減少により、55.3から56.0へと、わずかに上昇した(11月14日付「バンコク・ポスト」紙)。
IMFが11月26日に公表したIMF4条協議の暫定報告によると、「タイの経済成長率は2024年に2.7%、2025年に2.9%と、緩やかに加速する」と予測し、政府の景気刺激策に支えられて個人消費は堅調に推移すると見込んでいる。他方、タイの潜在成長率の低下傾向には、断固たる構造改革が必要とし、具体的な内容として、デジタル化の加速や労働者のスキルアップ、またはリスキリング、ガバナンス強化による生産性と競争力の押上げなどを列挙した。また、同国の課題である家計債務の累積について、低所得者や障害者に適切な社会保護を提供し、経済状況の変化に対する耐性を高めることを提案している。
(藤田豊)
(タイ)
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