オーストラリア経済界、低迷する生産性の向上への改革を提言
(オーストラリア)
シドニー発
2024年12月09日
経済団体のビジネス・カウンシル・オーストラリア(BCA)は11月19日、オーストラリアの競争力強化と生産性向上の必要性を訴える報告書を発表した。報告書は、オーストラリアの生産性が低迷しているという課題と、それを改善するために必要な改革について提言を行った。
BCAは、オーストラリアの国際競争力が低下していることを指摘した。例えば、スイスのビジネススクール国際経営開発研究所(IMD)による世界競争力ランキングで、オーストラリアは2021年の22位、2023年の19位のように20位前後を推移していること(注1)や、実質総可処分所得がOECD諸国と比較して早いペースで減少していることなどを取り上げた。
また、国内では、2024年第2四半期の労働生産性は年率0.5%増(注2)にとどまっている。財務省が2023年8月24日に発表した世代間報告書(IGR)においても、2020年までの10年間の生産性の伸びは、過去60年間で最も低い水準だったと指摘されている。BCAは、IGRにおいて2020年代の労働生産性の伸びが1.2%と予測されていることを踏まえ、この伸びを達成するためには、2030年までに毎年、現状の4倍にあたる2%を上回る必要があるとした。
BCAの報告書では、生産性を向上させるために、次の4点に最も注力すべきだと提言した。
- 行政手続きの簡素化と規制の撤廃
- 労働法の見直し
- 職場のスキルと能力を高めるための教育改革の実施
- 企業投資を促すための税制改革
- 研究開発と新技術の導入支援
このうち、1.については、連邦政府、州政府や地方自治体の規制が部分的に重複することによるコストが発生していること、また、例えば住宅分野では、政府による新築住宅開発承認の遅れなどが、住宅不足に悪影響を与えている現状の課題を挙げた。4.については、法人税率を現在の30%から25%に引き下げることにより、投資誘致を促し、国際競争力を強化すべきだと主張した。5.については、GDPに占める研究開発費でみると、オーストラリア(GDP比1.7%)はOECD平均(同2.7%)を下回っていること、また、エンジェル投資やシード段階の企業に対する投資面でも大きく後れを取り、オーストラリアの1人当たりの資金調達額は、米国の3分の1にとどまっていることを指摘した。
(注1)2024年のランキングでは、13位に順位を上げた。
(注2)BCAは、2024年9月4日にオーストラリア統計局(ABS)が発表した、2024年第2四半期国民経済計算(GDP統計)における、労働時間あたりGDP(労働生産性)上昇率を引用している。
(青島春枝)
(オーストラリア)
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