米FRB、利下げは新たなフェーズに、2025年は利下げペース鈍化の見込み
(米国)
ニューヨーク発
2024年12月19日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は12月17~18日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.25ポイント(25bps)引き下げ、4.25~4.50%にすると決定した(添付資料図参照)。利下げは9月以降3会合連続となる。クリーブランド連銀のベス・ハマック総裁が利下げの見送りを主張して反対票を投じた。市場の予想どおりの利下げとなった。
発表された声明文では、インフレと雇用についての見解は前回の発表を踏襲し、大きな変更は見られなかったものの、今後の政策決定に関して「追加的な政策調整の幅と時期を検討」との文言が追加された。この点に関しては、FOMC後の記者会見で、ジェローム・パウエル議長が補足説明を行っており、「9月以降、100bpsの引き下げを行い、中立金利にかなり近づいている」「経済と労働市場が堅調な限り、今後さらなる利下げを検討する際は、慎重になれるだろう」「これまで迅速に行動してきたが、新たなフェーズに入った」として、今後の利下げペースを鈍化させていくことを明確にした。
こうした利下げペースの鈍化は、同時に発表されたFOMC参加者の見通しにも反映されている。今回の見通しでは、政策金利に関し、2025年が2回分(前回は4回分)、2026年が2回分(前回2回分)、2027年が1回分(前回0回分)と、特に2025年の利下げ幅の大幅な縮小が示唆されている。これは主にインフレ率見通しの引き上げによるもので、個人消費支出(PCE)デフレーターは2024年10月時点で2.3%だったが、今回の発表では2025年について、前回の2.1%から2.5%に、変動幅の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCEは2024年10月時点で2.8%だったが、(今回の発表では)前回の2.2%から2.5%にそれぞれ引き上げられている。また、失業率は2025年が4.3%(前回4.4%)と、前回見通しよりもわずかながら改善しており、こちらも利下げペースの鈍化と整合する内容となっている(添付資料表参照)。
今回の見通しでは、トランプ次期政権の財政政策の影響は限定的な織り込みにとどまっているもようだ。記者会見での質問に対し、パウエル議長は「予測に組み込み始めた者もいれば、そうしなかった者もいた」と回答している。ドナルド・トランプ次期大統領による関税引き上げなどでインフレ率が上振れた場合には、さらなる利下げ回数の減少も想定される。
このほか、記者会見では、(1)2025年のPCEデフレーター値は現在より上昇するのに、なぜ利下げが可能なのか、(2)2018年9月に発表されたティールブック(注)は関税引き上げの金融政策への影響を考える上でなお有効なのか、関税引き上げの影響を組み込んで早期に対応するべきではないか、(3)100bpsの利下げを行ってきたにもかかわらず、市場の金利は下がっておらず、FRBが考えているよりも現在の状況は引き締め的なのではないかなどに関して質疑がなされた。
(注)経済や金融情勢の現状・見通し、金融政策の代替案などに関するFRBスタッフによる分析資料のこと。作成から5年間は非公表。
(加藤翔一)
(米国)
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