経済開発庁、2025年にフィリピンの上位中所得国入りを視野

(フィリピン)

マニラ発

2024年12月05日

フィリピン経済開発庁(NEDA)のアルセニオ・バリサカン長官は11月29日の記者発表会で、フィリピンがこのまま経済成長を続ければ、2025年には上位中所得国入り(注1)する可能性があるとの見通しを示した。世界銀行によると、フィリピンの2023年の1人当たり国民総所得(GNI)は4,230ドルで、現在は下位中所得国に分類されている。

2024年のフィリピンの経済成長率は、第1四半期(1~3月)が5.8%、第2四半期(4~6月)が6.4%、第3四半期(7~9月)が5.2%で、第1~3四半期の平均は5.8%だった。

バリサカン長官は11月7日、政府が掲げる経済成長率の目標(6~7%)に到達するためには、第4四半期(10~12月)に少なくとも6.5%の経済成長を遂げる必要があるとした。その上で、第4四半期はホリデーシーズンの消費支出に加え、より安定した消費者物価や、堅調な労働市場と在外フィリピン人労働者(OFW)からの送金が見込まれるため、政府目標達成は可能だと楽観的な見通しを示した。また、経済成長の追い風として、中央銀行(BSP)の政策金利(注2)や準備預金要件の引き下げ(注3)により、今後、高額消費財や資本集約型のインフラ投資を中心に、民間投資が増加することを挙げ、期待感を示した。

他方で、経済成長を妨げる外的リスク要因として、地政学的な緊張や大国間の対立、米国など主要貿易相手国の国内、あるいは国家間で生じる政治・経済的圧力といった不確実性を挙げた。

世界銀行によると、ASEAN主要国では、マレーシアが1992年、タイが2010年、インドネシアが2022年(注4)に上位中所得国入りを果たしている。2023年の各国の1人当たりGNIは、マレーシア1万1,970ドル、タイ7,180ドル、インドネシア4,870ドル、ベトナム4,180ドルとなっている。

(注1)世界銀行によると、1人当たりGNIが1,145ドル以下の国を低所得国、1,146ドルから4,515ドルまでの国を下位中所得国、4,516ドルから1万4,005ドルの国を上位中所得国、1万4,005ドル超の国を高所得国としている。同基準は2024年7月1日から2025年6月30日まで適用される。

(注2)BSPは8月15日、目標リバースレポ金利を25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げ、6.25%とした。その後、10月16日にも25bp引き下げ、目標リバースレポ金利を6.0%としている。

(注3)BSPは10月25日から、銀行、準銀行機能を有する非銀行金融機関の預金や預金代替債務の準備預金準備率について、従前の9.5%から250bp引き下げ、7%としている。

(注4)インドネシアは2019年にいったん上位中所得国入りしたが、2020年には下位中所得国に分類され、2022年に再び上位中所得国入りしている。

(中村和生)

(フィリピン)

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