スターマー英首相、労働党のミッション実現に向け、具体的な目標発表

(英国)

ロンドン発

2024年12月06日

英国のキア・スターマー首相は12月5日、「変化に向けた計画(Plan for Change)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。

スターマー氏は2023年2月に、労働党の選挙公約のベースとなる「ミッション」として、経済成長、クリーンエネルギー、国営医療サービス(NHS)、治安の強化、機会の平等という5つの分野に関し施策を発表した()。今回の発表で、これらのミッションの達成に向け、今後約5年間の現議会期間の具体的な6つの目標(milestone)を示したかたちだ(添付資料表参照)。

具体的には、経済成長については、1人当たりの実質可処分所得および1人当たりGDPを増加させるとし、G7諸国の中で最も高い持続的な成長を達成するとしている。クリーンエネルギーに関してはこれまで、2030年までの電力のゼロカーボン化が掲げられていたが、今回最低でも95%をクリーンにするとして初めて具体的な数値を示した。

これらの取り組みの土台として、公約でも掲げていた、経済的な安定性、国境の安全確保、国家安全保障の3点を回復することを改めて表明。うち国境に関しては、国内の労働者に資するため合法・不法両方の移民の削減に取り組むとした。

このほか、スターマー首相は政府の改革についても言及、企業や市民社会、地方政府との連携の必要性を強調した。その一環として、政府と連携して目標達成に向けた取り組みを実行する委員会を設置、企業や公的部門などからの代表を募るとしている。また、スターマー首相は公務員改革についても言及し、人工知能(AI)や先端技術の導入などを通じた効率性の向上などを進めるとした。

今回の発表について、報道では、労働党政権の支持率低下への対応とする見方もある。調査会社ユーガブの調査(12月2日付)でも、労働党政権について「支持しない(disapprove)」と回答した割合が58%となっており、選挙後に実施された7月22日付の調査から26ポイント増加している。

このほか、クリーンエネルギーに関しては目標の引き下げ、移民に関しては目標値が示されていないなどの声も上がっている。スターマー首相はメディアに対し、クリーンエネルギーに関しては「常に(電源の)ミックスは生じうる」とコメント、移民の削減については「政府が対応すべき根本的なもの」として、「任意の数」を設定するつもりはないとした(「BBCニュース」12月5日)。

(山田恭之)

(英国)

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