イベリア半島グリーン水素価格指数の算出開始、初週値は1キログラム5.85ユーロ

(スペイン、ポルトガル)

マドリード発

2024年12月18日

スペインのガス市場運営機関MIBGAS(Mercado Ibérico del Gas)は12月16日から、イベリア半島市場(スペインとポルトガル)の再生水素価格指数「MIBGAS IBHYX」の算出を開始外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます上で週次更新する。

初週の価格は1キログラム当たり5.85ユーロ、1メガワット時(MWh)当たり148.36ユーロ。ドイツの同指数(EEX HYDRIX)の260.73ユーロ/MWh(12月11日)を4割以上も下回り、安価な再生可能エネルギー電力を背景に、EU域内での価格優位性が高くなった。しかし、天然ガス価格が約40ユーロ/MWh、グレー水素(注1)が約2ユーロ/キログラム〔二酸化炭素(CO2)コスト込み〕を考慮すると、従来の化石燃料との価格差は依然として大きい。

同指数の公表は、イベリア半島でのグリーン水素市場の創設に向けた第一歩となる。指数はイベリア半島の標準的な水電解プラント(注2)で生産されるグリーン水素の生産コストをベースに算出しており、生産事業者が期待する収益を得るための最低売値の価格シグナルともなる。今後は需要側の支払い意思を反映した買値(入札価格)指標も算出する予定で、需給間ギャップを基に、グリーン水素市場の流動性を測る指標となる。

MIBGASは11月、需要側のベンチマーク価格を把握する試みとして、グリーン水素開発企業DH2エナジーとの協力の下、スペインで初のグリーン水素オークションの開催手続きを開始した。これは、DH2エナジーがアラゴン州で開発計画中のプラント「Hysencia」(2027年前半に稼働開始予定)で生産するグリーン水素が対象となる。同プラントは欧州水素銀行の第1回入札の支援対象プロジェクトとなっている(欧州委、ブラック ジャック)。

(注1)水素精製時に発生する二酸化炭素(CO2)を回収しない方法で作られる化石燃料由来の水素。約65%が天然ガス由来、20%が石炭由来、残り15%程度が石油精製プロセスなどでの副産物として得られる水素。

(注2)標準プラントの仕様は、製造能力50メガワット(MW)の電解槽(電解技術の指定はなし)で、年間稼働時間4,500時間、耐用年数は25年。電力コストは電解プラント付近の太陽光・風力発電所および電力購入契約(PPA)を通じた供給価格。指数算出には、純水製造装置などの補助システムも含めた設備投資額や運転費用、プラント効率などの変数が考慮される。

(伊藤裕規子)

(スペイン、ポルトガル)

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