イスラエル国防軍、シリア国境との緩衝地帯に部隊配置
(イスラエル、シリア、ロシア、イラン)
テルアビブ発
2024年12月10日
シリアのアサド政権の崩壊を受けて、イスラエル国防軍(IDF)は12月8日、X(旧Twitter)に投稿し、国内防衛のために必要な軍隊をシリア国境とゴラン高原の間にある緩衝地帯に部隊を配置したことを明らかにした。また、IDFは「シリアの内政に干渉していない」と強調し、「緩衝地帯を維持し、イスラエルと国民を守るために、必要な限り活動を継続する」とした。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は8日、イスラエル・カッツ国防相らとともに、ゴラン高原を訪れ、「アサド政権の崩壊は大きなチャンスであると同時に、大きな危険をはらんでいる」との声明を発表した。さらに「起こり得る脅威に対して、行動を起こさなければならない」とし、1974年に締結したイスラエル・シリア兵力引き離し協定(注)が崩壊したとして、IDFに対し、敵対勢力がイスラエル国境付近に進駐しないよう、これらの地帯を一時的に管理するよう指示したと述べた。
テルアビブ大学付属国家安全保障研究所(INSS)のカーミット・バレンシ上級研究員は8日、「アサド政権の急速な崩壊は、『抵抗の枢軸』の同盟国からの効果的な支援の欠如に起因している。シリア軍は弱体で機能不全に陥っていることが判明し、ロシアは軍事基地を抱える沿岸地域に重点を置くために存在感を縮小したため、アサド政権に意味のある保護を提供できなかった」と指摘した。今後のシナリオとしては、(1)異なる勢力・派閥が支配する区域に分割されたシリアの断片化、(2)連邦制に関する合意、または(3)統一シリアの枠組みの下での新政権の台頭を提示したが、いずれのシナリオも、予見可能な将来、イランが主導する「抵抗の枢軸」にとって大きな打撃となると述べた。
イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。
(注)イスラエル・シリア兵力引き離し協定:1974年5月31日に締結された、イスラエルとシリア間の兵力引き離し地帯と、その両側への兵力・装備制限地域の設置、また、その履行を監督するための国連監視団の設置を求める協定。
(中溝丘、アリエル・マロム)
(イスラエル、シリア、ロシア、イラン)
ビジネス短信 a92ce393d0220f9a