アイルランド総選挙、共和党が接戦を制すも連立交渉は難航予想
(アイルランド)
ロンドン発
2024年12月09日
アイルランドで11月29日に実施された下院(定数174、比例代表制)総選挙で、ミホール・マーティン副首相率いる共和党(フィアナ・フォイル、FF)が前回2020年選挙を10議席上回る48議席を獲得し、第1党の座を維持した(添付資料表参照)。南北アイルランドの統一を党是に掲げるシン・フェインが39議席、サイモン・ハリス首相が率いる中道右派の統一アイルランド党(フィナ・ゲール、FG)が38議席で続いた。アイルランド放送協会RTEが投票当日に発表した出口調査でも、3党が極めて接戦となることが予測されていた。FF、FGとともに連立政権を構成する緑の党は前回選挙から11議席減の1議席と大敗した。
総選挙は2025年3月までに行われる予定だったが、ハリス首相が11月6日に早期実施の意向を表明し、同月8日にマイケル・ヒギンス大統領が議会を解散した。現地報道によると、早期実施の背景には、反移民感情の高まりなどを受けた野党シン・フェイン党の支持下落があった。
引き続き連立を組むとの見方がある共和党と統一アイルランド党の議席を合計すると86議席で、過半数の88議席にはわずかに届かない。政権の樹立に向けた連立交渉に注目が集まっている。前回の総選挙後の連立政権樹立では、前半の2年半をFF、後半の2年半をFGの党首を首相に指名する取り決めがなされていた(ブラック ジャック ルール)。一方、今回の選挙後には、FFのマーティン党首は「全ての政党を尊重しなければならない」として、政党間の合意がなされるまではあらゆる可能性があるとした(「RTE」12月6日)。
今回の総選挙の争点となったのは、生活費の上昇や、住居不足、ホームレス問題、移民などとされている。2015年と比較して住宅価格は92%上昇、緊急宿泊施設への居住者数も11月29日時点で過去最高の1万4,966人に達したとされている(「スカイニュース」12月1日)。
新議会による最初の審議は12月18日に予定されているが、それまでに連立交渉が終了する可能性は低いとみられている。マーティン党首も2024年内に連立に向けた合意がなされる可能性は低いと述べている(「RTE」12月3日)。
(松丸晴香、山田恭之、尾関康之)
(アイルランド)
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