エネルギー鉱山相が交代、非合法鉱業への対応が喫緊の課題

(ペルー)

リマ発

2024年12月03日

ペルーのディナ・ボルアルテ大統領は11月30日、ホルヘ・モンテロ氏をエネルギー鉱山相に就任させることを発表し、同日、首都リマの大統領府で宣誓式を行った。非合法鉱業の合法化に向けた対応を政府としてどのように進めるのか、新大臣には就任早々、業界や議会との難しい調整が待ち受けている。

ボルアルテ大統領が2022年12月7日に就任して以降、今回の交代で累計56人が閣僚に就任したことになる。各世論調査では、同大統領の支持率は3~6%となっている。

モンテロ氏は、フランシスコ・サガスティ政権時の2020年から2021年までエネルギー鉱山省(MINEM)の副大臣を務め、手工業的・小規模採掘鉱業のためのマルチセクター国家計画の策定に携わった。また、ゴールド・フィールズがペルーで手掛けるセロ・コロナ鉱山やホックシールド・マイニングの地域住民対策を担う関係団体での勤務もある。鉱業分野の経験は豊富だが、大臣として複雑な課題への対応に迫られる。

前任のロムロ・ムチョ氏は、国会で不信任動議が可決されて11月26日に辞職した。きっかけはMINEMが、2024年12月31日に期限を迎える鉱業合法化統合登録(REINFO)制度に代わる枠組みとして、手工業的・小規模採掘正規化法(MAPE)の法案を議会に提出したことにある。

ペルーでは、非合法鉱業による脱税、地元地域の治安悪化、環境汚染が長年の課題となっている。そこで政府は、非合法鉱業の合法化を促進するためREINFO制度による登録を2017年に開始した。ところがMINEMによると、2024年10月までに登録された約9万件のうち、合法化されたものは2%、合法化の過程にあるものが21%で、多くが登録を行ったあと合法化に向けた対応を行わないまま、操業を続けている。そこで、MINEMによる監督を強化するMAPE法案を提出したところ、議会から反発を受け、ムチョ氏に大臣としての能力がないなどの理由で不信任動議がかけられた。

非合法なかたちで操業を続ける鉱業関係者は、MAPEで政府による管理が厳しくなると操業が難しくなり、失業者が増えると主張。連日、国会前で泊まり込みの抗議活動を行ったり、道路封鎖を行ったりして、政府による監督強化に反発している。

APECビジネス諮問会議(ABAC)のペルー事務局を担い、国内で発言力のあるペルー貿易協会(COMEX)は、REINFOには非合法な鉱業を合法化するためのメカニズムが欠如しており、制度的に失敗していることは明らかと指摘した上で、議会の決定に反対するとの声明を発表している。

(石田達也)

(ペルー)

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