持続可能な漁業養殖イベントで、日本企業が人工魚礁の取り組みを発表

(メキシコ)

メキシコ発

2024年12月03日

メキシコのバハカリフォルニアスル州ラパス市で112729日に、食料安全保障に焦点を当てた持続可能な漁業、養殖業、バリューチェーン構築を目的とする「持続可能な漁業養殖フェスティバル バハカリフォルニアスル2024Festival Regional de Pesca y Acuacultura Sostenible Baja California Sur 2024)」が開催された。

開会にあたり、同州のビクトル・マヌエル・カストロ・コシオ知事は「わが州は、メキシコの海岸線の約22%を占め、水産・養殖産業が重要な地域である。私たちは、沿岸部の環境保全に取り組まなければならない」と述べた。加えて、カリフォルニア湾を囲む州以外にも、キンタナロー州やベラクルス州、タマウリパス州などを含むメキシコ国内の、合わせて15州からの参加者がいることに言及し、イベントへの高い関心に感謝した。

写真 開会式の様子(ブラック ジャック コツ撮影)

開会式の様子(ブラック ジャック コツ撮影)

貝殻廃棄物を活用した人工魚礁が現地ニーズに合致

同イベント内では、貝殻廃棄物を活用した人工魚礁(シェルナース)による、漁業資源の回復および生物多様性保全に向けた取り組みに関する「里海(注1)セミナー」も行われた。

シェルナースを開発した海洋建設(本社:岡山県倉敷市)は、2017年から国際協力機構(JICA)の各種事業を活用し、ラパス湾での調査・実証実験を開始。20234月には主要な関係者を岡山県に招聘(しょうへい)し、里海の概念を認識してもらうとともに人工魚礁や海洋牧場(注2)の視察機会を設け、継続的な働きかけを行ってきた。今回のセミナーでは、設置したシェルナースで無脊椎動物・藻類・稚魚を含む205種が観測されたことなどについて、プロジェクトチームが発表した。

同社の片山真基代表取締役社長は「その土地の海域や生息する魚種に応じて、適切なシェルナースの形状も変わる。日本での研究・開発結果を引き続きメキシコでも生かしていきたい」と語った。

海洋建設と共にプロジェクトを推進する、バリューフロンティア(Value Frontier)の石森康一郎代表取締役社長は「カリフォルニア湾を囲む各州政府が課題と捉えていたカキやホタテなどの貝殻の適切な処理方法を検討していた中で、シェルナースの存在を知るに至った。メキシコの行政機関、教育機関、漁業関係者、NGOなどとの関係構築を経て、現地で里海協議会を設立・運営し、プロジェクトの成果が得られてうれしく思う。各州政府や民間企業からの関心も高く、メキシコ湾地域、ひいてはカリブ海諸国や中南米への展開にも取り組んでいきたい」と、今後の展望を語った。

写真 「里海セミナー」の様子(ブラック ジャック コツ撮影)

「里海セミナー」の様子(ブラック ジャック コツ撮影)

写真 会場で展示されたシェルナース(ブラック ジャック コツ撮影)

会場で展示されたシェルナース(ブラック ジャック コツ撮影)

(注1)人手が加わることにより、生物生産性と生物多様性が高まった沿岸海域を指す。

(注2)食物連鎖と海洋生物の成長段階に応じたネットワークを維持、創出すること。

(深澤竜太)

(メキシコ)

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