マレーシアのバイオテックスタートアップ、食品廃棄活用技術で最優秀賞

(マレーシア、日本)

クアラルンプール発

2024年12月25日

アジア各国・地域の技術系スタートアップがコンテスト形式で競う「第13回アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が112021日に、千葉県柏市で開催され、マレーシアのバイオテックのスタートアップ、Entomal Biotech(エントマルバイオテック)が最優秀賞を受賞した。

AEAは、日本の公的機関や民間企業、教育機関が共催するアワードで、開催地の「柏の葉キャンパス」はさまざまな大学や研究機関、医療機関が集積するエリアだ。柏の葉キャンパスを日本が誇るイノベーション拠点として世界に発信すべく、2012年から毎年開催されている。同アワードでは、13カ国・地域から64社のエントリーがあり、事前審査を通過した15社がファイナルセッションに進んだ。グローバルで活躍する経営者や投資家などの審査員の前でピッチを行った。

写真 AEA2024最優秀賞受賞時のヤニー・チン氏(Entomal Biotech提供)

AEA2024最優秀賞受賞時のヤニー・チン氏(Entomal Biotech提供)

エントマルバイオテックは、ブラックソルジャーフライ(注)を用いたバイオコンバージョン技術が強みだ。食品の残飯など有機廃棄物を幼虫の養分にし、特殊な飼育環境下で生育することで、効率的にタンパク質の豊富なブラックソルジャーフライを育成する。ブラックソルジャーフライの幼虫は家畜の飼料やペットフードとして同社の製品に加工され、幼虫と成虫のふんから同社の技術で肥料を製造する。同社は革新的な技術とマレーシアの気候の強みを生かしたビジネスモデルで、持続可能な世界の資源の活用を目指している。

同社のチーフコマーシャルオフィサーのヤニー・チン氏によると、同社の技術は通常のブラックソルジャーフライの生育環境下と比べて、卵の収穫量が40%以上増加し、幼虫への育成量を20%以上増加できている点が強みという。現在、マレーシアをはじめ、韓国などでも展開しているが、今後は日本への展開や日本企業との連携拡大を検討しており、「特に有機廃棄物の分解を助ける酵素技術で日本には優れた企業が多いため、関心が高い」という。

写真 エントマルバイオテックのラボ(Entomal Biotech提供)

エントマルバイオテックのラボ(Entomal Biotech提供)

米国商務省国際貿易局によると、マレーシアでは近年、廃棄物が増加しており、2024年時点で1日当たり3万9,000トン以上の廃棄物が処理され、近年増加を続けている。中でも食品廃棄物を含む有機廃棄物が多くを占め、有機廃棄物の削減とアップサイクルに今後ますます関心が高まることが予想される。こうした持続可能性維持の側面からも、エントマルバイオテックによる食品廃棄物を原料とする技術が評価されたとみられる。

(注)日本名はアメリカミズアブ。有機廃棄物を消費し、タンパク質が豊富な動物飼料に変換できるハエの一種。

(都築佑樹、アンドリュー謝克耀)

(マレーシア、日本)

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