英国政府、初の「男性健康戦略」策定
(英国)
ロンドン発
2024年12月10日
英国政府は11月28日、心臓病や脳卒中、前立腺がん、精巣がんから、メンタルヘルスや自殺予防までに及ぶ重大な健康課題に対処するため、初の「男性健康戦略」を策定することを発表した。2025年に公表する予定としている。政府はこの戦略を、国営医療サービス(NHS)を再建する「10カ年保健計画」の一環として位置づけている。
ウェス・ストリーティング保健・ソーシャルケア相は、男性の健康支援団体ムーベンバー(Movember)やプレミアリーグなどの主要団体と協力し、男性のメンタルヘルスや自殺予防の強化にも焦点を当てるとしている。NHSによると、英国では自殺による死亡者の4分の3が男性となっているほか、50歳未満の男性の死因で最も多いのが自殺だ。また、男性の平均寿命は女性に比べて4年短く、がん、心臓病、2型糖尿病など、さまざまな健康問題にさらされているとした。心臓病が英国男性の死因の第1位であることや、前立腺がんで45分ごとに1人の男性が亡くなっている現状を受け、予防と早期発見の重要性を強調した。
政府は戦略策定に当たって、男性の健康やウェルビーイングの促進を図る英国メンズシェッド協会や前立腺がん協会、アフリカ擁護基金などと連携し、男女間の平均余命の差を縮めるために何が有効で、何が必要かに関する男性の健康課題への意見を公募している。また、戦略の策定では、オンラインポータル「チェンジNHS」を通じて、市民の意見も募集するとしている。さらなる健康不平等の解消に向け、企業や市民社会との協力を進めるとともに、SNSが若い男性に与える影響にも対処していく方針だ。また、メンタルヘルスケアの専門家を8,500人追加配備し、全国の小中学校や地域社会への支援体制を強化する計画。ムーベンバーの最高経営責任者(CEO)は「男性の健康改善が家族やコミュニティー、経済にも波及効果をもたらす」として、政府の取り組みを歓迎している。
英国では、前立腺がんの診断をサポートする人工知能(AI)を開発するルシーダ・メディカルがケンブリッジ大学などと連携し、2023年12月にイノベートUKからプレシジョンメディシン分野(注)の補助金として、100万ポンド(約1億9,100万円、1ポンド=約191円)を獲得し、病変を特定するプラットフォームの改良に活用するとしている。
(注)遺伝子レベルでがんを解析し、そのがんに合った治療を行う先端治療
(榊原達也)
(英国)
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