11月の米消費者物価指数は前年同月比2.7%上昇に、コア指数は3カ月連続で横ばい、住居費は低下
(米国)
ニューヨーク発
2024年12月12日
米国労働省が12月11日に発表した11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%上昇と、前月の2.6%上昇からわずかに加速した。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同3.3%上昇と3カ月連続で変わらなかった。前月比では、CPI、コア指数とも0.3%上昇だった(添付資料図1、表参照)。いずれも市場予測と一致した。なお、コア指数は、3カ月前比、6カ月前比でみた場合には、それぞれ3.7%上昇(前月3.6%上昇)、2.9%上昇(同2.6%上昇)といずれも加速した。
品目別に前年同月比でみると、エネルギー価格は引き続き下落したものの、下げ幅は3.2%(前月4.9%下落)と引き続き縮小し、11月のCPIを押し上げる要因となった。食料品も2.4%上昇と前月(2.1%上昇)から伸びが加速した。
コア指数のうち、衣料品(1.1%上昇)が前月(0.3%上昇)より伸びが加速、新車(0.7%下落)の下げ幅が前月(1.3%下落)から縮小するなどした結果、財部門は0.6%下落と前月(1.0%下落)から下落幅が縮小した。
一方、サービスは4.6%上昇と前月(4.8%上昇)から伸びが縮小した。物価のうち3割のウエートを占める住居費は4.7%上昇と前月(4.9%上昇)から減速した。賃料は4.4%上昇(前月4.6%上昇)、帰属家賃(注)は4.9%上昇(前月5.2%上昇)、テナント保険は2.0%上昇(前月2.5%上昇)といずれも伸びが鈍化している。それ以外のサービス価格の伸びも縮小し、自動車保険の低下などが寄与して輸送サービスは7.1%上昇(前月8.2%上昇)、医療サービスは3.7%上昇(前月3.8%上昇)になっており、これらを踏まえた、住居費除くサービスは4.1%上昇と前月(4.5%上昇)から伸びが鈍化した(添付資料図2参照)。
今回の結果に関し、市場関係者は事前予想と一致したことを好感しており、雇用統計の結果(2024年12月9日記事参照)とあわせ、12月17~18日に行われる連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げが行われるとの見方がさらに強まった。また、CPIの内容面でも、FRBが物価低下の牽引役として期待する住居費が低下したことや、そのほかのサービス価格も低下したことなど、物価安定目標の達成に向けポジティブな内容がいくつかみられ、これらも利下げを支持する根拠となりそうだ。
他方で、物価低下のもう1つの牽引役だった財の伸びの低下幅が縮小傾向にあることなども影響し、コアインフレはいずれの期間で見ても足踏みないし上昇基調にあり、インフレとの闘いがまだ終わっていないことを示唆している。また、今後は移民の流入減少に伴う影響や、ドナルド・トランプ次期大統領による関税引き上げなどインフレ上昇圧力が強まると予想される。このため、2025年の利下げ回数が9月時点の見通しより減少する可能性があり、FOMC参加者からどのような見方が示されるのか注目される。
(注)自己が所有する住宅(持ち家住宅)に居住した場合、家賃の支払いは発生しないものの、通常の借家や借間と同様のサービスが生産され、消費されるものと仮定して、それを一般の市場価格で評価したもの。
(加藤翔一)
(米国)
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