リーブス英財務相がEU財務相会合に参加、ブレグジット後初
(英国、EU)
ロンドン発
2024年12月19日
英国のレイチェル・リーブス財務相は12月9日、ベルギー・ブリュッセルで開催されたEU財務相会合で、英国とEUの関係について演説を行った。英国の財務相が同会合に出席するのは、英国のEU離脱(ブレグジット)後初。
11月にロンドンで行った演説でEUとの関係強化に言及していたリーブス氏は、今回の演説でも、貿易、企業への支援、労働者に利益をもたらす経済成長を促進するため、EUとの実務的な関係構築を求めた。特に英EU関係で3つの主要分野として次を挙げた。
- ウクライナにおける戦争など共通課題への対応
- 経済競争力強化の推進力となる自由貿易の支持
- 英EU間の経済パートナーシップの強化
共通課題への対応については、ウクライナ支援やロシアへの対応について言及したほか、防衛、調達、研究・開発などの分野で連携する必要性を述べた。
自由貿易に関しては、投資、イノベーション、低価格化だけでなく、サプライチェーンリスクへの対応に資するものと位置づけ、同盟国と連携する必要があるとした。その上で「英国が米国かEUのいずれかを選択しなければならない」という考えは誤りとするキア・スターマー首相の発言を繰り返した。中国についても、安定的かつ長期的な関係を構築する手段を検討していると続けた。
英EU間の経済パートナーシップについては、既存の合意による相互利益に加え、より意欲的に実際的な措置を講じて経済関係の強化を図るとした。その例として、金融サービスでの協力を挙げ、英・EU共同金融規制フォーラム(2023年7月3日記事参照)の実施や、欧州全体で民間投資を拡大するに当たり、英国資本市場の役割について言及した。最後に、金融サービスのみならず、相互の市場へのアクセスの拡大が両者の経済全体の強化につながると締めくくった。
なお、リーブス氏は演説の中で、イタリアのエンリコ・レッタ元首相とマリオ・ドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁が発表した報告書にも言及した(、ドラギ前ECB総裁、ブラック)。両報告書はEUに焦点を当てたものではあるが、報告書で取り上げた長年の生産性の停滞や投資の低迷などの課題は、英国にも共通するものとした。これら競争力の課題に対して、英国は政治的・財政的安定性、公共投資の拡大、住宅やインフラの計画制度や雇用制度の改革、2025年公表予定の産業戦略などを通じて取り組むとした。
(ワルダ・ホリー)
(英国、EU)
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