米シンクタンク、トランプ次期政権の外交政策を解説、対中政策に柔軟性指摘も

(米国、日本、中国、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、メキシコ、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2024年11月25日

米国シンクタンクのブルッキングス研究所は11月14日、トランプ次期政権の外交政策に関する論考外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同研究所の各国・地域の専門家がそれぞれ、日本、中国、韓国、台湾、インド、東南アジア、メキシコ、EU、ロシア、ウクライナなどとの関係性や、安全保障・気候問題・先端技術分野の外交政策の方向性を解説した。主な内容は次のとおり。

〇日本:次期政権下で、ドナルド・トランプ氏の主張する関税政策(注1)が実行されれば、大きな経済的混乱が発生する可能性がある。また、次期政権下で欧州や台湾海峡での米国の抑止力が弱まれば、権威主義国家の多くが日本近隣に存在することを踏まえると、日本の安全保障上の利益は著しく損なわれる。さらに、日本の石破茂首相が少数与党の政権運営を迫られる中で、貿易協定や在日米軍駐留経費負担などを巡る交渉では、石破首相の交渉余地は制限される可能性がある。もちろん、米国にとって日本は重要な同盟国であり、日本にとって米国は安全保障の基盤だが、次期政権下では波乱も予想される(注2)。

〇中国:トランプ氏は選挙戦で、ウクライナと中東の戦争を終結させると繰り返し主張してきた。同氏が中国を、これら戦争を終結させる上での障害と見なすか、または役立つ相手と見なすかによって、方向性は大きく変わってくる。また、同氏は理想主義者ではなく、独裁者との協力に道徳的なためらいはない。一方で、同氏の周辺の人々は、中国が米国の現実的な脅威だと見なしている。新政権の対中政策がどちらの見方になるのか、まだわからない。

〇東南アジア:米国は今後もインド太平洋地域を重視する姿勢を維持する見通しだ。一方で、経済的状況は変化が起こる可能性が高い。同氏の関税政策が実行されれば、東南アジア諸国は中国の代替市場として位置付けられる可能性もあるが、米国に対して貿易黒字を計上するベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアは、貿易不均衡の是正や関税の引き上げに直面する可能性がある。

〇メキシコ:2国間関係は危機的状況に直面する。同氏が主張する関税政策や、不法移民の流入阻止・強制送還が実行されれば、メキシコの経済政策、米国のサプライチェーンを支える自動車産業およびその他製造業の安定、また、メキシコ国内の安定を脅かす可能性がある。

〇ロシア、ウクライナ:同氏は戦争の終結を訴え、米国の同盟国が自国の安全保障を確保する努力を怠って米国を利用していると考えている。ウクライナは、戦争終結に向けたいかなる合意でも、相当な領土をロシアが占領することを受け入れるよう求められるだろう。

(注1)60%の対中追加関税賦課、中国の恒久的正常貿易関係(PNTR)撤回、10~20%のベースライン関税賦課、トランプ互恵通商法成立など。詳細は2024年8月9日付地域・分析レポート参照

(注2)米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)専門家の日米関係の展望は関連ブラック ジャック ディーラー

(葛西泰介)

(米国、日本、中国、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、メキシコ、ロシア、ウクライナ)

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