欧州委、EUの2024年GDP成長率予測を0.9%に下方修正も、成長継続を見通す
(EU、ユーロ圏)
ブリュッセル発
2024年11月26日
欧州委員会は11月15日、秋季経済予測を発表した(添付資料表1参照)。2024年の実質GDP成長率は、EU27カ国で0.9%、ユーロ圏20カ国で0.8%と予測(添付資料表2参照)。前回の春季経済予測(関連ブラック ジャック 遊び方)から、EUは0.1ポイント下方修正、ユーロ圏は据え置きとなった。2025年のGDP成長率は、EU1.5%、ユーロ圏1.3%と拡大を見込むが、前回予測からは各0.1ポイント下方修正した。
EU経済は、停滞後の2024年第1四半期(1~3月)に回復、第2~3四半期(4~9月)は成長を維持した。雇用拡大と実質賃金の回復に支えられ、可処分所得は堅調に拡大したものの、高インフレの経験を背景に、購買力は第2四半期(4~6月)まで伸び悩み、第3四半期(7~9月)には拡大する見込み。不確実性の高まりは、特に投資に影響を与えているものの、内需を緩やかに加速させる条件は整っていると評した。天然ガス価格は2024年、2025年ともに予測を上回り、電力卸価格は、2024年に若干上昇するも、2025年に低下、双方ともに2026年は前年水準を下回るとした。
2024年のEU加盟国別のGDP成長率は、エストニア(マイナス1.0%)を含む5カ国でマイナス成長を予測した。ユーロ圏主要国では、スペイン(3.0%)、フランス(1.1%)、イタリア(0.7%)は成長が予測される中、ドイツはマイナス0.1%との見通し。
2024年のインフレ率(消費者物価指数上昇率)の見通しは、前回予測からそれぞれ0.1ポイント下方修正し、EU2.6%、ユーロ圏2.4%、2026年までにともに2.0%前後まで低下すると見込む。EUの失業率は、10月に5.9%という歴史的な低水準を記録した。2024年は6.1%予測と、前回予測から据え置かれた(添付資料表3参照)。
EUの経済見通しは依然として不確実性が高く、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や、中東情勢の悪化による地政学リスクの高まり、EUのエネルギー安全保障の脆弱(ぜいじゃく)性などを背景に、大きく下振れしているとした。また、保護主義的な措置が強化された場合、世界貿易が圧迫され、EU経済に悪影響を及ぼす可能性に言及。欧州委のパオロ・ジェンティローニ委員(経済担当)は、経済成長率を押し上げ、不確実性を乗り切るために競争力と安全保障の強化が必要だとした。
(大中登紀子)
(EU、ユーロ圏)
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