アルゼンチン、政策金利を35%に引き下げ
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2024年11月12日
アルゼンチン中央銀行は11月1日、政策金利を5ポイント引き下げ、35%とした。中銀はハビエル・ミレイ政権発足月の2023年12月から、133%だった政策金利を段階的に引き下げており、5月14日以降は40%に据え置いていた。今回の利下げは7回目となった(2024年5月は2回の引き下げを実施、添付資料図参照)。
5月以降の金利据え置き後、今回の利下げに踏み切った理由について、中銀は、通貨の流動性が低下し、インフレ期待も再び低下が鮮明になったことを挙げている。インフレ率は5月に前月比4%台まで低下した後、8月まで足踏み状態が続いたが、9月には前月比3%台に低下した。中銀がエコノミストらを対象に毎月実施するマクロ経済指標の予測値に関する調査(REM)の最新の結果をみると、10月から2025年3月までのインフレ率の予測値の中央値が前月比3%台と横ばいで推移している中で、1~2%台を予測する回答もある。中銀はインフレ率の低下に合わせて政策金利を引き下げているが、政策金利の引き下げは国庫による通貨ペソ建て資金調達コストを削減することにもつながり、政府にとっても利点がある。
政策金利の引き下げに伴い、プラソ・フィホ(Plazo Fijo)と呼ばれる定期預金金利の低下を懸念する声も聞かれる。インフレから資産価値を守る手段として、定期預金には根強い需要がある。しかし、アルゼンチンのネットメディア「インフォバエ」の11月1日付記事によると、3月11日に中銀が中銀通達A7978を公布し、定期預金金利の下限を廃止したことから金融機関間の預金貸し出し競争が生じており、今回の政策金利の引き下げが定期預金金利の低下には直接つながらないとの見方もある。アルゼンチンでは、政策金利の段階的な引き下げにより住宅ローンが復活するなど、銀行貸し出しへの需要が高まり、同時に銀行によるペソの調達需要も高まっている。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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