メローニ首相、トランプ氏と電話会談、EUへ提言も

(イタリア、米国)

ミラノ発

2024年11月14日

イタリアのジョルジャ・メローニ首相は11月6日、米国大統領選挙で勝利した共和党のドナルド・トランプ前大統領と電話会談を行った。イタリア政府の発表によると、両者はウクライナ戦争や中東危機などのあらゆる国際問題について、安定・安全のために緊密に連携する意向を示し、その枠内にはEUとの関係も含まれるとした。また、両国の関係は既に良好であるとし、今後も継続・強化する方針で合意した。

メローニ首相はトランプ前大統領当確の一報直後にも、自身のX(旧Twitter)ページを更新し祝辞を述べた。また、トランプ氏を支援したイーロン・マスク氏に電話し、祝意を伝えたことも明らかにしている。メローニ首相の所属政党である「イタリアの同胞(FDI)」は中道右派で、トランプ氏に近い立場は明確だったが、選挙戦中は中立の立場を貫いていた。一方、連立与党の一角である「同盟(Lega)」のマッテオ・サルビーニ党首は選挙戦中からトランプ氏支持を強く表明していた。

同首相は11月8日、欧州理事会の非公式会合後の記者会見で、米国との関税や競争力などの課題は、2022年のインフレ削減法(IRA)に端を発しており、昨日今日に生じたものではないとし、「欧州は米国が何をしてくれるかではなく、自らのために何ができるかを考えるべきだ」との見方を示した。また防衛費の増額については、「欧州、そしてイタリアも、防衛への投資を強化することは、独立性や自治権の保障につながると確信している」とコメントした。一方で、ウクライナ戦争に関して質問が及ぶと、「戦争がある限り、イタリアはウクライナの傍らにいる」と立場を明確にした。同日付のイタリアの主要経済紙24オーレは、トランプ氏再選により、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライアン委員長と右派をつなぐ架け橋として、EUにおけるメローニ首相の発言力が増すのでは、と見解を述べている。

産業界からは、イタリア鉄鋼連盟会長で、日本の経団連に相当するイタリア産業連盟(コンフィンドゥストリア)の幹部でもあるアントニオ・ゴッツィ氏が11月7日、イタリア産業連盟の地域会合で、予測を語るには早いとしながらも「トランプ次期大統領が彼の計画どおりに貿易や経済に関する政策を実行すれば、欧州の産業空洞化リスクを招くだろう」と発言した、と報じられた。

また、イタリア農業事業者団体のコルディレッティは、EUの共通農業政策(Common Agricultural Policy:CAP)は、米国の農業政策と比較し投入額に大きな差があるとし、トランプ氏の勝利によって、不均衡を埋める必要性がより高まったとした。イタリアの農業は、製造業における米国とEUの経済紛争によって不利益を被っているとし、両者の関係改善をあらためて求めた。

(平川容子)

(イタリア、米国)

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