アグリ・フードテック・イベント開催、有望スタートアップに日本企業選出
(米国、日本)
イノベーション部スタートアップ課
2024年11月28日
米国カリフォルニア州サンタクララでアグリ・フードテックのイベント「スライブ グローバルインパクトサミット(THRIVE Global Impact Summit)」が11月8日、開催された。コーポレートベンチャーキャピタル(CVC、注1)やスタートアップによる農業・食糧分野の課題や投資のトレンドに関するパネルディスカッションが行われ、スタートアップや投資家、大企業など、世界中から計300人以上が参加した。
サミットを主催したスライブ SVG ベンチャー(以下、スライブ)は、資金調達の段階がシードからシリーズA(注2)のアグリ・フードテック分野のスタートアップを中心に100社以上に投資。40以上の海外大手企業とのコネクションを有し、日系では2024年9月にカゴメ(本社:愛知県)と共同でCVCファンドを設立している。
オープニングセレモニーで、スライブのジョン・ハートネット最高経営責任者(CEO)は「2024年は米国大統領選挙や地政学的な要因もあり投資の見通しが立てづらい状況だが、労働力や水資源、持続可能性といった農業・食糧分野での課題解決は引き続き望まれる」と述べ、アグリ・フードテック分野でのスタートアップによる技術革新に期待を示した。
本サミットには、スライブとジェトロの連携によるアクセラレーションプログラムに参加している日本の5社のスタートアップも出席した。各社概要は次のとおり。
- アクプランタ(AC-Planta):酢酸を主成分とする製品「スキーポン(Skeepon)」を製造。遺伝子組み換えや農薬を用いることなく、植物の乾燥・高温に対する耐性を向上させる。
- EFポリマー(EF Polymer):作物の残渣(ざんさ)から吸水性の高いポリマーを製造。土壌の保水力向上により水や肥料の節約につながるだけでなく、完全生分解性のため環境にも優しい。
- エンドファイト(Endophyte):植物の根に共生できる微生物を用いた育苗用培土や同培土壌で生育した苗を製造・販売。植物の成長と回復力を高め、過酷な環境でも生育が可能となる。
- 輝翠テック(輝翠TECH):農薬散布や草刈りを自動で行う農業用全自動ロボット「ADAM」とSaaS型人工知能(AI)農場管理プラットフォーム「Newton」を開発。労働力不足の解決と収益性の高い農業の実現を目指す。
- トーイング(Towing):微生物と有機質肥料を混合した高性能バイオ炭を製造・販売。短期で良質な土壌造りができるほか、本来であれば、廃棄・焼却される植物残渣などを材料とするため、脱炭素化にも貢献。
本サミットでは、農業・食糧分野の課題解決に貢献するスタートアップを選出するコンテストを実施。当日会場では、事前申し込み企業100カ国を超える1,000社から最終選考に選ばれた15社のファイナリストによるピッチが行われた。各分野および総合での優勝者が選ばれ、日本のEFポリマーが総合優勝した。当日ピッチを行った同社の下地邦拓取締役兼最高執行責任者(COO)は「優勝に甘んじず、フォローアップをして販売につなげたい」とさらなる成長への意欲を示した。
次回、THRIVE Global Impact Summitは2025年10月29~30日に開催予定。
(注1)事業会社が社外のスタートアップに対して投資を行う活動、または事業会社によって設立されたスタートアップに対して投資を行う会社。
(注2)投資家が企業に投資する段階で、シードステージから今後の成長が見込まれる段階の最初の本格的投資ラウンドを「シリーズA」とし、追加出資の都度「B」「C」とアルファベット順で表現される。
(加峯あゆみ、加賀悠介)
(米国、日本)
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